2024年 4月 25日 (木)

リハビリ勤務中の社員に「労働条件の不利益変更」どう説明する?

社会保険労務士・野崎大輔の視点
A君に直ちに退職を求めることができない

   就業規則の変更には合理的な理由がなくてはならず、特に労働条件の不利益変更に当たる場合には労働者との合意も必要です。逆に言えば、これをクリアすれば今回のようなルール変更が可能です。休職者の保護は社会的にも大切ですが、期限を定めておかないと会社や同僚の負担が大きくなり、あらたな過重労働を招くリスクもあります。就業規則の見直しは、職場の秩序維持には必要な措置といえるでしょう。

   ただし、急な不利益変更は社員を混乱させるおそれがあります。一定の期間は適用しないなど、経過措置を設けた方がよいでしょう。また、新たに罰則規定を設けた際に過去の行為を処罰できないように(遡及処罰の禁止)、見直し後の就業規則を適用してA君に直ちに退職せよとはいえません。仮に新しいルールを「職場復帰後1年間」とするならば、規則見直しから1年間様子を見ることも考えられます。問題となるのがA君だけなら、個別に相談して期間を決めてもいいと思います。なお、休職やリハビリ勤務の期限満了後の扱いは、社員個別の事情があるので、「退職」「解雇」などと定めず、期限のみ定めておく方がよいと思います。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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