会社を辞めないが頑張りもしない「新・ぶらさがり社員」とは?

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   50代以上は「老害」、40代は「バブル」、20代は「ゆとり」――。そんなレッテルを貼って他の世代を批判する30代にも、他の世代を超えるような「危機」が迫っているという指摘がある。

   企業に人材育成プログラムを提供するシェイク代表の吉田実氏は、1980年前後生まれの会社員の特徴を「新・ぶらさがり社員」と表現している。彼らは会社を辞めないが、かといって頑張りもせず会社にぶら下がっているので、ここに手をつけないと「会社の将来が危なくなる」というのだ。

昇進の意欲低く、私生活優先を崩さない

いまどきの「30歳の危機」を指摘した『「新・ぶら下がり社員」症候群』
いまどきの「30歳の危機」を指摘した『「新・ぶら下がり社員」症候群』

   シェイクが2010年に実施した調査によると、「仕事を通じて実現したい夢や目標はありますか?」という問いに対し、「ない」「あまりない」と答えた人が最も多かったのは、社会人7~9年目の社員たちだった(32.2%)。

   また、「現在の自分の業務は、会社の中で重要な役割を担っていますか?」という問いに「そう思う」「ややそう思う」と答えた人が最も少なかったのも同じ層(37.4%)で、1~3年目の社員(41.9%)を下回ったという。

   会社からの要求が厳しくなる年代という要素が影響している可能性もあるが、吉田氏は少し違う見方をする。

「いまの30歳前後に『新・ぶら下がり社員』と言うべき特徴を持った層が多くいます。彼らは自分を諦め、組織を諦め、未来を諦めている。ここを刺激しないと、会社の未来は暗いと思いますよ」

   仕事のやる気は70%主義で、昇進や転職への意欲も低い。社会人として自立し価値を発揮して会社に貢献する年代なのに、プライベート最優先を譲ろうとしない。

   いつの時代にも不まじめな社員はいたと思われるが、彼らが違うのは「いいかげんではなく、むしろまじめ」で、与えられた仕事はこなし遅刻やサボリもしないこと。その代わり、自分で仕事のハードルを上げて挑戦せず、受身の姿勢を崩さないのだという。

   吉田氏が作成したチェックポイントには、「覇気がない」「言い訳ばかりする」「人から言われた仕事しかしない」「部下や後輩を育成しようとしない」「会社批判ばかりする」など10項目が並んでいる。

当事者いわく「悪いのは自分ではなく時代」

   なぜこのような社員が増えているのか。吉田氏は彼らが

「過去に例を見ないほど不運な世代」

として自信を失い、強い諦め感を抱いているおそれを指摘している。

   確かにこの世代は、大きな社会の変化の波に翻弄されてきた。小学校を卒業するころにバブルが崩壊。「すぐに回復する」という楽観的な雰囲気のままトレンディドラマ花盛りを迎えたが、いつのまにか未知の深刻さが押し寄せていた。

   父親がリストラで失業し、専業主婦の母親がパートに出るなど、比較的裕福だった家庭環境も一変した。2000年には求人倍率が1倍を割り、大学を無事に卒業した人でも、就職氷河期で厳しく選別される悔しい経験をしている。

   ようやく入った会社も「成果主義」を掲げて社員を突き放す。メンタルヘルス不全の社員も急増した。会社に見切りをつけて転職を考えるころには、リーマンショックの直撃にあっている。2006年の「ライブドア事件」の影響もあったかもしれない。

   このような見立てを、当事者たちはどう思うのか。広告営業の仕事をする31歳の男性は、

「昔はいらだちも多かったけど、期待を下げれば生きていけないほど貧しくもない。不幸というより不運、悪いのは自分じゃなくて生まれた時代。そう考えないと息が詰まりますよ」

と話してくれた。

   吉田氏は、彼らに失った自信を取り戻し、能力を発揮し成長してもらうためには、「難易度の高い仕事を任せる」「変化を期待し伝え続ける」「遠くから見守る」「部下を責めない」といった育成スタイルを業務に取り入れることを提案している。

吉田実:「新・ぶら下がり社員」症候群
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