「社内クライアント」にもプロフェッショナルな対応が必要だ

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   職場がコンピュータ化されて以来、部下や他部署からの承認メールや、ネット・ラーニングの受講指示など、いろいろな業務要請に日々追われている。その件数があまりにも多すぎるので、もう勘弁ね、と逃げ出したくなる。僕には紙と鉛筆の世界のローテクの方がずっとしっくりくる。ハイテクは苦手だ。

   苦手な言い訳をするつもりはないが、ひとつひとつの業務の処理方法が微妙に違うことが、煩雑さをあおっているように思う。また、初めての処理でも手順に迷わないものがある一方で、何度見ても担当部署に電話で聞かないと分からないものがある。

   組織を動かすためには、煩雑であっても社内業務をこなしていかなければならない。と同時に、僕はこうした業務の受益者にもなっているはずである。言い換えれば、社内クライアントになっているのである。

コンサルタントは社内業務の「受益者」を特定する

(カット:長友啓典)
(カット:長友啓典)

   コンサルタントとして組織の効率性向上を手掛けるときに行う典型的なアプローチは、社内業務の受益者を特定することである。普通どんな書類にも、イントラネットでしているどんな業務でも、その結果を受け取る部署なり担当者が必ずいる。

   分かりやすい例で言うなら、営業推進部門で行っている販促ツールづくりは、営業部隊がクライアントである。営業推進部門でとりまとめられる営業データや分析結果は、営業計画を策定する企画部門や、現場で営業担当者たちを鼓舞する営業管理職をクライアントにしている。

   人事部が行う人事評価には、いろいろなクライアントが想定されている。評価される本人にとっては、きちんと客観的にフィードバックされる限りにおいては、今後の自己努力の指針を与えることになる。また、経営者も、人的な資源を有効に配分していくための貴重な情報を得ることになる。

   そのうえで、受益者からみて、該当する業務はどれほどの価値になるものなのか。さすがに、まったく価値がない業務を行っていることは、めったにない。しかし、受益者からみて「あったら助かるな」と思いながらも、コスト換算すると思いもよらない高コスト業務になっていることもある。

   受益者からみて、そこまでコストを掛けるほどの価値がないと思えば、簡素化するなり、廃止するなりしてしまえばよいわけだ。

よい組織は社内クライアントを強く意識している

   イントラネットであっても、外部の人が使うインターネット・ショッピングサイトのように、ページ内のユーザ動線(目線)を意識したデザインにすべきだろう。人事のフィードバックだって、もっと建設的なものにする余地がある。

   しかし実際には、社内クライアントはないがしろにされ、知らず知らずに「ご本部さま」になってしまっている組織が多い。

   マーケティング部、営業推進部、生産技術部、総務部など、本社・本店と呼ばれる拠点にある組織の多くは、営業現場、生産現場を社内クライアントとするはずである。人事部であっても研修部門は、社員がまさにクライアントとなる。

   社内にもれっきとしたクライアントがいて、その社内クライアントに尽くすことにこだわるプロフェッショナル意識を持つスタッフがどれくらいいるかで、組織のパフォーマンスは大きく違ってきてしまうように思う。

   いろいろな会社を見てきて、よい組織とは、社内であってもクライアントを意識している組織のことであると強く感じる。

   ひとつひとつの創意工夫は小さなものでしかないのだけれど、組織の中でそれが積み重なることで、組織が活性化していくはずではないだろうか。社内クライアントに対するプロフェッショナルな対応こそが、実は組織風土を浄化させていく鍵のように、僕は思っている。


大庫 直樹

大庫直樹(おおご・なおき)
1962年東京生まれ。東京大学理学部数学科卒。20年間にわたりマッキンゼーでコンサルティングに従事。東京、ストックホルム、ソウル・オフィスに所属。99年からはパートナーとして銀行からノンバンクまであらゆる業態の金融機関の経営改革に携わる。2005年GEに転じ、08年独立しルートエフを設立、代表取締役(現職)。09~11年大阪府特別参与、11年よりプライスウォーターハウスクーパース常務執行役員(現職)。著書に『あしたのための「銀行学」入門』 (PHPビジネス新書)、『あした ゆたかに なあれ―パパの休日の経済学』(世界文化社)など。
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