売り手・買い手に気づきを与える「ヒアリング」――勝ち残るリアル営業(3)

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   ネット通販には「ヒアリング」というステップは、一般的に存在しません。希望する商品と価格が準備された相手に対し、商品を提示し、ニーズに合致すれば成約となる「購買者任せ」の販売方法だからです。

   矢継ぎ早に商品を見せ、ようやく関心を持ってもらえたら、今度は「いくらまで安くなる?」と値引きを余儀なくされる…。そんな営業マンならネットで事足りる時代になったという意味でもあります。リアル営業として勝ち残るためは、ネットとの差別化を図れる「ヒアリング」のスキルを身につけることが不可欠なのです。

購入条件ではない「顧客の状況」を聞き出す

「悩み手とパートナー」の関係に変えるプロセス
「悩み手とパートナー」の関係に変えるプロセス

   ヒアリングが大切だと、頭で分かったつもりの営業マンは多いと思います。しかし私が見る限り、実際にちゃんとできていないケースが圧倒的に多いです。

   一番よくあるのは、面談にこぎつけても相手の正確なニーズを十分に把握しないまま、いきなり手持ちの商品で勝手に案件化してしまう営業マン。彼らは、

「どうしたら、うちの商品を買ってもらえますか」

と相手の「購入条件」を聞き出すことに終始してしまいます。これでは本来のヒアリングにはなりません。

   ヒアリングの目的は、買い手・売り手双方の「気づき」を喚起することにあります。買い手の本音の部分を話させることで、自らの潜在的なニーズに関する気づいてもらうことが重要です。また、売り手が想定していなかった提案を思いつく気づきを得ることも、正しいヒアリングのあり方といえるでしょう。

   となれば、顧客から聞き出すべきことは「購入条件」ではなく、商品そのものから少し離れた「顧客の状況」であることが分かります。そして、顧客の状況に関する質問の先にこそ、潜在ニーズや新しい提案に関する気づきがある可能性が高いのです。

   少し難しくなりますが、ヒアリングとは「購入条件」で結ばれる「買い手と売り手」の関係を、「提案」で結ばれる「悩み手とパートナー」の関係に変えるプロセスでもある、と言えるのではないでしょうか。そしてネット通販と異なり、リアル営業では具体的な商品などの案件がなくても、ヒアリングが可能になるわけです。

誘導質問の前に「本音の糸口」を探すこと

   具体的なヒアリングのやり方を考える際には、前回取り上げた「カットイン(切り込み)」との関係が重要になります。飛び込みでいきなり商品セールスを始める営業は論外としても、信頼感や親近感を抱く間もなく、いきなりヒアリングに入る営業マンが私のところにもよく来ます。そんな相手には面食らいますし、

「見ず知らずのあんたに、なんでこっちの考えをあれこれ話さなくちゃいけないの?」

という疑問が頭をもたげてきます。そうなると「図々しい奴だ」と腹立たしくもなり、「悪いね、今忙しいから」と追い返すことになるのです。

   ヒアリングを円滑にすすめる「準備段階」としてのカットインの方法は、前回の記事を参照いただくとして、ヒアリングは相手との距離を縮めてからスタートすべし、とあらためて認識してください。

   ヒアリングにおける質問の仕方は、場面ごとにやり方が異なります。クロージング近くで一定の結論に導きたい場合には、「××は嫌ですよね?」「○○だと思いませんか?」といった「はい」か「いいえ」で答えてもらう「誘導質問」が効果的です。

   ところが、相手のニーズが盛り上がっていない段階でこれをやると、相手に警戒感を与え、「そうはいくもんか」と見えない抵抗を受けることになってうまくいきません。

   導入段階でいくらか親近感をもっていたとしても、誘導質問を繰り返していてはお互いのキャッチボールが進みません。ヒアリングの初期段階では、極力「はい」や「いいえ」で答えられない質問をぶつけ、相手の懐に入り込み、本音の糸口を探すことが大切です。

   次回は「クレーム対応」を契機とするヒアリングについて検討します。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。執筆にあたり若手ビジネスマンを中心に仕事中の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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