昭和のサラリーマンたちは「ネクタイアル中」だったのか?

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   週刊プレイボーイ2012.3.26号が、「若者がお酒を飲まなくなった理由」について考察している。流通ジャーナリストの金子哲雄氏は、若い男性がお酒に弱くなり、アダルトDVDやゲームで十分満足するので、女のコを誘って飲み会をしなくなったからと分析する。

   しかし、1990年代半ばをピークに、お酒の消費量が減少している理由はそれだけなのか。ネット上には、これに納得しない声があがっている。まず目につくのは「カネがないから」という意見だ。

若者のお酒離れ「対策を講じるべき問題ではない」

おいしく健康に飲んでいるなら問題はない
おいしく健康に飲んでいるなら問題はない

   人件費の総額は下がっているのに、中高年の給与が高止まりしているので、20~30代の給与が低いまま据え置かれている企業が少なくない。初任給から10年近く、ほとんど昇給しなかったと憤慨する人もいる。

「クルマ離れに酒離れ、外食離れに旅行離れ、結婚離れ…。全部カネがないのが結論じゃん。毎度毎度いちいち考察する意味がない」

   確かに現金給与額は、1998年ころから前年比で減少傾向が明確になっており、何らかの関連性があるかもしれない。上司のサイフにも余裕がなくなり、「おごってもらう機会もない」のでは、消費量が減るのもしかたないだろう。

   そのほか、「飲酒運転の厳罰化」「肉体労働、単純労働の減少」「酒に溺れるオヤジたちを見て嫌になった」といった説をあげる人もいるが、そもそも分析して対策を講じる問題ではないという声もある。

「酒は飲んでるよ。昔と違って浴びるように飲まなくなっただけ」
「昔のサラリーマンが異常なんだろ? いまの方がまともなんだから、酒離れという言葉自体がそもそもおかしい」

   日本生活習慣病予防協会のホームページには、経済成長や都市化の著しい国では、多くの人がストレスを感じており、「ストレスに対処するためにアルコールなどを求めている」という考察が掲載されている。アルコールの大量消費も、高度経済成長ならではの慣習であり、低成長期の日本ではストレスの対処法が変化しているのかもしれない。

   また、「昔の会社は『ネクタイアル中』がたくさんいたよな」と指摘する人もいた。聞きなれない名前だが、一種のアルコール依存症の人を指すらしい。

「おとなしい人も饒舌になり、翌朝には覚えていない」

   仙台市の宮千代加藤内科医院のホームページによれば、ネクタイアル中とは「のべつ酒を飲んでいて、仕事をせず、乱暴を振るう人」とは違い、「仕事はしていて、外見的に生活破綻をきたしているようには見えない」タイプのアルコール依存症を指すという。

   都内に勤務する40代の会社員は、20年前のオフィスには「ネクタイアル中」と呼ぶにふさわしいサラリーマンが、上司や先輩にたくさんいたという。

「僕が新人で配属された営業グループには、昭和の昔から行きつけの居酒屋があって、メンバーはとにかく毎日飲みに行く。部長や課長も、夕方になるとソワソワしだして、終業前に『先に行ってるぞ!』と言い残して明るいうちから飲んでいることもあった」

   店にはメンバーの名簿があり、来店すると日ごとに丸をつけるようになっている。飲み代はすべてツケで、月の終わりに集金して店にまとめて払いに行くのは、新人の大事な仕事だったという。

「あのころはまだクールビズとかなくて、夏でもみんなネクタイ締めてました。背広に大手企業のバッチをつけて、毎日閉店まで飲む。仕事中はおとなしい人も飲み出したら饒舌になって、大ゲンカになっても翌朝は覚えていない。あれはまさに『ネクタイアル中』だったんじゃないですかね」
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