2024年 4月 17日 (水)

公務員人件費2割カットを公約した人たちが「国民からの採用枠半分にしといたから、これでチャラな」というのはどう考えてもおかしい件

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   タイトルの通りである。先日、政府は公務員の新規採用56%カットを閣議決定したが、どう考えてもこれはおかしい。確かに総人件費は2割カットになるのかもしれないが、そんなことを国民が求めていたとは思えないからだ。

   仮に、すでに公務員になっている人たちをAとする。マニフェストで「公務員の人件費を2割下げますよ」と言われれば、誰だってAの賃金が2割下がるんだなあと連想するだろう。ところが、蓋を開けてみれば、Aは一時的に7.8%下げるだけで、これから公務員になる人だけが減るわけだ。

自らの身を切らず、国民サービスの低下も押しつける気か

   ついでにいうと、実質的な定年延長措置として60歳からの再任用制度も来年度からスタートする予定だから、生涯賃金でみればAの人たちの賃金はむしろ増える計算になる。

   さらに言えば、Aの人たちの中で無駄の見直しを全くせずに新規採用だけを減らすということは、明らかに国民向けのサービスが低下するということだ。

   たとえば、行きつけのレストランが値上げしたとしよう。

「お客さまに値上げする前に、まずは身を切らねばということで新卒採用は辞めました。だから、人手不足なのでお水やお手ふきはセルフサービスになります。我々もしっかり身を切っているのですから、お客さまも値上げ分を負担してくださいね」

と言われて、ああ、そうですかと納得する人はいないだろう。全然身を切ってないじゃないか、ていうか値上げしといてサービス低下するのかよ!と普通は思うだろう。

   公務員の件もまったく同じだ。彼らはまったく身を切っていないし、サービスの受け手である国民目線が欠落している。

   とはいえ、岡田さん(副総理)の考えていることは筆者には痛いほどよく分かる。

「クビ切るって言っても、そういうルールがないのだからしょうがないだろう。そういうルールを作るのを嫌がっているのは国民じゃないか」

と、(恐らくは)腹の中では考えているはずだ。

政府は「もっとも頭を使わない選択肢」に逃げた

   それは確かにその通りで、日本の現状では組織の都合によってバンバン首を切る整理解雇には厳しい制限が加えられている(官については法改正して身分保障をなくせば可能かもしれないが、民とのバランスの問題から突出はできないはず)。

   でも、だからこそ、率先して政治にリーダーシップを示してほしかった。

   筆者は一律の賃下げには常に反対だ。一律カットではダメな人はダメな状態に安住し、優秀者はモチベーションを失うだけだからだ。

   公務員といってもキャリア官僚や専門的職業は賃上げすべきだし、不要な仕事とそうでない仕事をきっちり分別した上で、業務プロセス自体の見直しをすべきだ。そしてそれは、民間にとっても今一番必要な処方箋でもある。

   そういった処方箋から目をそむけつつ、一律の賃下げ+新卒採用半減に走った点は、「もっとも頭を使わない選択肢」に逃げたと言われても仕方ないだろう。

   民主党は確かに「公務員人件費2割カット」というマニフェストを形式的には守れたかもしれないが、一方でより大きなものを失ったことを理解すべきだ。(城繁幸)

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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