部下はなぜ、上司と「共謀」して横領するようになったのか

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   前回取り上げた、上場企業の不動産管理子会社における横領事件に新たな展開があった。先日逮捕された女性経理担当者(38)に続いて、その上司だった男(48)も2012年7月9日に業務上横領容疑で逮捕された。

   報道によれば、女性担当者は元上司の預金口座に不正な振込を繰り返しており、横領は「(上司に)指示されてやった。自分はほとんど金を使っていない」と供述したそうだ。女性に対する取調べや預金口座の入出金記録などから、容疑を固めたのであろう。

男女の関係?発見した上司が脅した?

経理の管理者と担当者が共謀していないか
経理の管理者と担当者が共謀していないか

   当初の報道によれば、女性は異動の内示を受けた際に自ら上司に不正を申告している。したがって、発覚時の上司は別人であろう。逮捕された男はすでに退職していた可能性もある。

   女性は逮捕時に「金を引き出したことに間違いない」と語ったそうだが、言外に「でも、使ったのは私じゃありません」という思いを込めていたのかもしれない。

   あまり興味本位になってはいけないが、2人はなぜ共謀するようになったのか、仕事柄いろいろと想像してしまう。男女の関係が絡んで、というのはベタな分析だが、女性が着服したのを上司が見つけ、「会社に言われたくなければ」と脅して自分の口座に不正入金をさせ続けたなどの可能性もあるだろう。

   いずれにしても、経理の管理者と担当者に共謀されては会社側もたまらない。不正をチェックすべき上司が横領を指示したら、内部統制は無力化してしまう。企業会計審議会による財務報告に係る内部統制の基準書にも、「複数の担当者による共謀」によって内部統制が有効に機能しなくなる可能性があると明記されている。

   取引業者など「社外との共謀」は、さらに見つかりにくい。先月末に明るみに出た、東証1部上場の総合重機メーカーの子会社取締役らによる不正がいい例だ。

   同子会社はレアメタルを多用する製造販売業だが、取締役製造部長が納入業者幹部と結託し、レアメタルの仕入価格を水増しして、キックバックを不正受領していた。さらに、彼の部下の製造課長は、製造工程で出るレアメタルの金属くずを同じ業者に売却する際に、一部を帳簿に計上せずに着服していたそうである。

「○○さん御用達のお客様」には要注意

   取締役部長という強力な権限を持つ者が、納入業者の幹部と示し合わせれば、不正リスクは格段に高まる。そんな上司の悪行を目の当たりにした課長は、「ならば自分も」と不正を正当化したのかもしれない。

   スクラップの横流しは、この業界では「伝統的な」手口といえよう。親会社はリスクをどの程度認識し、チェックしていたのか。

   「くず」と名がつくと管理が甘くなりがちであるが、流通市場で価値があるものは、会社にとって重要な資産であることを忘れてはならない。ましてやレアメタル、腐っても鯛である。

   また、レアメタルの仕入価格が適正かどうかは、親会社には分かりにくく、内部監査等でも指摘できなかった可能性もある。

   内部か外部かを問わず、共謀はお互いの馴れ合いや癒着から生じる。それを防ぐためには、人事を固定化せず、適切な頻度で異動や担当替えを徹底することが必要だ。「この人にしか分からない仕事」「○○さん御用達のお客様」には要注意だ。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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