「ホワイト企業」の作り方

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   実は先日、本連載コラムの「ザ・シミュレーション生活保護2030」によって、「貧困ジャーナリズム大賞2012」の特別賞を受賞させていただいた。素晴らしい! 社会保障の話としてはごくごく入門編的な内容ではあるが、そういうことすら知らない国会議員のセンセイ方も日本にはおられるようなので、よい教材になったのではないか。

   さて、その会場で行われたシンポジウムでの話。相変わらず朝日新聞系の識者の面々が「規制緩和で終身雇用を壊したから格差が拡大した云々」というのをおっしゃっておられた。「他人のシンポで喧嘩はしない」のが筆者のポリシーなので黙っていたが、中継を見て信じちゃった人もいるかもしれないので、ここで反論しておこう。

「終身雇用で雇う価値のある人間」を選別する大企業

   要するに「終身雇用制度」というのは、「民営化された社会保障」である。これ一本守らせるだけで、生活保護や職業訓練、家族手当などを、国はすべて企業に押し付けることが可能だ。

   もちろん、この民営化社会保障制度には欠点もある。まず、そんな40年単位での超長期雇用契約なんて守れる企業は大手と一部の中堅企業くらいで、その他の企業に就職してしまうと、事実上の無社会保障状態になってしまう点だ。

   さらに言えば、企業は営利組織なので、利益を上げるために「社会保障」の対象者を選ぶことになる。具体的に言えば、最低でもMARCH以上の大学を出ていて、3年以上ダブってなくて、できれば男の子で……と言った具合に、「終身雇用で雇う価値のある人間」を選別してしまう。

   これが、日本で「格差」と呼ばれるものの本質である。よく「ブラック企業を駆逐しろ」的なことを言う人もいるが、もともと優秀なエリートが選ばれた集団がホワイト企業というだけの話であって、後から色を変えさせるのは不可能だ。

   それでも納得できない人のために、新卒採用で競争率50倍を超える人気企業の朝日新聞社で考えてみよう。東大京大、早慶といったピカピカのエリート学生が多数応募してくる中で、果たして彼らは下から順番に採用できるだろうか。

   聞いたことないような駅弁大学や、5浪とかした27歳学部卒とか、面接ですらまともにコミュニケーションが成立しないような人材を、天下の朝日新聞社は新人として受け入れ、現場に配属できるのか。

「そんな奴らに記事が作れるわけないだろう!」

というのが正直なところだろう。ほらね、それが格差というものですよ。

エリートたちの「上から目線」では何も解決しない

   本気でそれを是正したかったら、終身雇用をバラバラに解体し、公営のセーフティネットを別枠で作るしかない。

   世の中には、終身雇用の保証される雲の上の世界から下界を見下ろしつつ、「努力しなかった奴らが悪い」という人たちがいる。

   一方、その隣に座りつつ「いやいや、うちらと同じ終身雇用を維持できない中小企業の経営者が悪いのだ」という人たちもいる。

   どちらも上から目線という点では変わらないし、その両者の間で「右か左か」を議論するほど空しいものはない。筆者が呼ばれたのは、少なくとも主催者の中に、上から目線同士の議論はむなしいと理解している人間がいたということだろう。(城繁幸)

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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