だから私は絶対に「LINE」を使わない

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「LINE、やらないの?」

   最近、よく訊かれることです。ご存じのようにLINEは、NHN Japanが提供する無料通話とチャットができるスマートフォンのアプリ。音声通話をネット経由のデータ通信で行うのですが、音声データは比較的容量が小さいため、かなり長く話したとしても定額制のパケット料金内に収まってしまいます。

   ゆえに、実質的に通話料金がかかってこず、「無料通話」と言われるわけです。そこで、小遣いが限られていたり、少しでも通信費を安く抑えたい若年層や留学生などを中心に、爆発的に迎え入れられました。

見ず知らずの他人にアドレス帳を預けたくない

   なにしろ、サービス開始から約1年で、我が国での利用者が2000万人、アジアを中心に世界ではユーザーが4500万人を突破しているというのですから、あなどれません。

   と思っていたのですが、よくよく話を聞いてみたら、人気の最大の理由は少し違う部分にあることがわかりました。

「えー、LINEを使う理由? そんなの、メッセージをやり取りする時に、いちいちメールボックスを開いたり、返信ボタンを押したりしなくていいからに決まってるじゃない」

   30代の女性2人と飲んでいる時に尋ねたら、口を揃えてこう言いました。筆者はLINEを使っていないため、そういう事情は知らなかったので、ちょっと驚きました。

   わずか2つか3つのアクションであっても、面倒なものは面倒、やらなくて済むならやりたくない。そうした、若年層が持つある意味での合理性をうまく汲み上げているところが、LINEがヒットした大きな理由であるようなのです。

「井上さんとやり取りする時も、いちいちメールでやらなくちゃならないから面倒なのよ。なんなら、いま私がLINEのアプリ、入れてあげようか?」

   あ、あのね、アプリのインストールぐらい、どうすればいいかなんて知ってますよ…。わざわざ入れてないの!筆者がLINEを使わないのは、アドレス帳データを預けたくないという1点に尽きます。一般には公開されていない人物や会社の連絡先が山ほど入っているので、見ず知らずの他人に預けることなど、恐ろしくてとてもできません。

「なんで私たちの人間関係を知ってるのかなって」

   しかも、現地法人とはいえ韓国企業といえば、通信大手のKTが半年以上にわたりハッキングを受けていることに気付かず、計870万人分の契約者情報を流出させたという事件が、どうしたって頭をよぎります。いくら口で「きちんと管理しています」と言われても、この目で確かめるまではうかつに信用などできません。

「ふーん、だからなのかぁ。LINEを使ってたら、元彼とかケンカして口もききたくない相手とかのアクティビティを教えてきたり、友人になりませんかレコメンドしてくるんだけど、アドレス帳データを持っていってるからなんだぁ」
「なんでLINEが私たちの人間関係を知ってるのか、不思議だなって思って、A子とも言ってたんだよねぇ」

   30代女子を若年層と言って良いのかどうかわかりませんが、合理的な割には、リスクやデメリットに対して警戒心がなさ過ぎのような気もします。LINEは神様や予言者じゃないんだから、知ってるってことの裏には、理由があるに決まってるじゃない。

   それにしても、グーグル、フェイスブックに続いて、LINEも着実に「ビッグ・ブラザー」への道を歩み始めているようです。自分の人生と直接関係があるわけではない、いち私企業に行動を把握され、監視されるのは、気分の良いものではありません。使用を避けられるものなら、できるだけ避けておきたいです。

「で、早くLINE入れなよー」

   だから、絶対やらないよ!(井上トシユキ)

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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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