「NECのリストラ」というコント

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   「しんぶん赤旗」の報じたNECのリストラ面談が話題となっている。こういう誘導は昔からどこの会社でもある話なので珍しくはないが、生々しいやり取りが驚かれているようだ。

   ただ、申し訳ないけれども、筆者は一読して笑ってしまった。どう考えてもコントにしか見えないから。だってそうだろう。ここに登場する人間の誰もが真実を語らず、演技しているのは明らかだ。

「辞めろとは言っていない。特別転進だ」
「いえ、このままこの会社で頑張ろうと思います」

   たぶん、本音ではこうだろう。

「つべこべ言わずにとっとと辞めろ」
「定年までしがみついてやる」

入り口から間違っていたバブル世代

   誰が読んでも明らかなように、この議論は同社の経営に1ミリグラムも役立っていない。創立以来の存亡の危機に際して、高学歴エリートたちが一生懸命こんな会話をぶっ倒れるまで続けているのだから、もはや笑うしかない。

   ついでに言うと、こういう大企業は入り口からしてコントである。終身雇用である以上、ポテンシャルのある人材を採って自社で長期間OJTすればいい。だから、4年間ぶらぶらしていた偏差値の高い学生だけを採る。

   ぶらぶらしていた人材を選考しなきゃならないから、質問は超いい加減なものだ。「どういうビジョンがあるか」とか「成功体験を聞かせて欲しい」とか、自己啓発セミナーばりのやり取りで、磨けば光るタマかどうかを見極めようとするのが新卒一括採用の実態だ。これも立派なコントだろう。

   今、同社でリストラのメインターゲットとなっているのは、90年頃に就職したバブル世代だ。大学4年間を遊び暮らし、学歴と若さだけで内定をもらえ、内定後は温泉やリゾートに缶詰にされ、会社から与えられる仕事は何でもこなしつつ、最後は「特別転進」というよくわからない言葉で退職に追い込まれているわけだ。

「会社をクビになる」プロットは誰にも変えられない

   どこかが間違っていたのは間違いない。そしてそれは、現在行われているリストラではない(リストラ自体は会社延命のために必須だから)。

   恐らくは、入り口の段階でボタンを掛け違えていたのだろう。彼らが就職した時点で、すでに身分として人生を組織に預ける時代は終焉していたのだ。本来であれば、会社ではなくジョブに対して就職し、一定の専門性と流動性を身につけておくべきだった。

   だが、国はもちろん、会社も社会も、そして彼ら40代社員たちも誰もそれをしようとはしなかった。ずっとコントで通してきた以上、終わりだけシリアスにする、つまり、

「君、クビだから、これからは自分で何とかしてね」

と宣言されることには、抵抗があるのかもしれない。でも、会社をクビになるというプロット自体は誰にも変えられないのだ。

   筆者は別に、若手に転職をしろとは言わない。ただ、今の20、30代の人間は、労働市場に放り出されても生きていけるくらいには一芸を磨いておくべきだと考えている。キャリアの最後でコントを演じずに済むように、自身のキャリアにはシリアスに向き合っておけということだ。(城繁幸)

NECの「リストラ面談」、どう思いますか?
会社がひどい
社員がひどい
どちらもひどい
どちらも悪くない
人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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