「うちの社員は積極性がない!」 その原因は社長じゃないですか?

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   7年前に亡き創業者からバトンを引き継いだ、ある中小企業メーカーの二代目社長から、こんなグチを耳にしました。

「うちの社員には、『ヨソを出しぬいてやろう』といった積極性のあるヤツがいなくて困ってるんだよ。今みたいな不景気が続くと、こいつらで本当に会社が持つのかなって不安になるんだよね」

   社員30人ほどの会社ですが、確かに営業部門にも開発部門にも、力強いというか図々しいタイプの男子社員が見当たらないのです。

研修で身につけさせて、と頼まれたものの

「統制」と「積極性」には相反する要素がある
「統制」と「積極性」には相反する要素がある
「なんとか社員に積極性を身につけさせる研修をやってくれないかな」

   そんな依頼を受けはしたものの、研修だけで効果が出るものだろうか…。そう感じた私は、前社長時代を知っていそうな総務のベテラン女性社員に話しかけてみました。「この会社はおとなしい男性が多いけど、昔からこんな感じなんですか?」

   彼女から返ってきたのは予想どおり「いいえ、違いましたよ」という答え。

「先代の頃は、もっと社内がガヤガヤしていました。イケイケドンドンの社員や、やることはやるけど文句も多くて手に負えないタイプもいましたね」

   たまたま通りかかった定年間近のベテラン男性社員も、話の輪に入ってきました。「今の社長はお坊ちゃんだからさ。社員の補充をするたびに、おとなしいのばかり採用している気がするな」

   そこで私は社長の了解をもらい、ここ5年間の中途採用面接の資料を見せてもらいました。こういう資料をちゃんと保管しているところが、いかにも堅実な日本のメーカーです。

   重点的にチェックしたのは、不採用者の綴り。書類に残されたコメントを見てみると「なるほど」と思える明らかな特徴がありました。

<応募者A>
部長コメント:我は強そうだが、積極性あり。前向き。採用したい。
社長コメント:良く言えば前向き。悪く言うと強気。調和を乱す恐れあり。不採用。
<応募者B>
部長コメント:過去の実績に自信をもっており、即戦力として期待大。採用したい。
社長コメント:実力はありそうだが自信家で、暴走の不安あり。不採用。

統制重視の「イエスマン採用症候群」なら当然そうなる

   部長が採用したいと思っても、社長がダメと判断したケースが結構ありました。その多くは「調和を乱す」「暴走の不安」といった理由によるものです。

   一方、社長が「採用」と判断した人の書類には「まじめそう」「従順」「素直」といった言葉が並んでいました。「積極性のあるヤツがいない」という社長のグチは、実は社長自身の採用方針に原因があったのです。

   これは、言ってみれば「イエスマン採用症候群」。雑談の中でそのことをやんわり伝えると、社長はあっさり「そうか…。そうかもしれない」と認めました。

「先代から会社を引き継ぐことになって、中途採用に社内の調和を乱されたくないと思ったのかもしれない。反抗されないかと不安だったんだね。皆とうまくやって活躍しそうな社員より、自分の言う事を素直に聞きそうなヤツを取ろうと思ったんだろう」

   また、自分には父親のように自力で会社を立ち上げた経験がなく、マネジメントに自信がなかったとも告白してくれました。面白いことに、男性社員にはハードルを高くする一方、担当部長の判断に任せた女性社員の中には、ユニークな人材もいることが分かりました。

   検討の結果、今後の採用面接は担当部長と総務部長に任せ、意見が分かれたときにのみ社長面接を行うことにしました。以前よりもかなり権限委譲したわけですが、これによって現場の課題に対応できる人材を選ぼうというわけです。

   実際このやり方で採用し始めたところ、社長によれば「なかなか抜け目のないタイプ」が採れたとのこと。「違うタイプが1人入るだけで、周りもずいぶん変わるものだなあ」と、社長はやや不安そうに苦笑いしていました。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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