2024年 4月 19日 (金)

社長の指示が守られないのは、ベテラン社員のサボタージュなのか?

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   大手電機メーカー出身で、老舗中小電機機器商社C社に出向して部長職にあるHさんからこんな相談を受けました。C社に行って驚いたのは、物事を決める会議はちゃんとあるのに、そこで決められたことが長続きしないこと。

「何かトラブルが起きて、社長が『明日からこういうルールでやっていこう』と指示をすると、担当部長連中は『ハイ分かりました』という返事はする。だけど実際には長続きしなくて、気がつくと元に戻っているんですよ。これじゃ何の改善も進まない。製造ラインを抱えたメーカーじゃ、こんないい加減なやり方は考えられない話です」

「新しいやり方が定着しないのも仕方ない」と諦めムード

「わかんないかなあ。社長が怒ったら、首を縮めて通り過ぎるのを待てばいいんだよ」
「わかんないかなあ。社長が怒ったら、首を縮めて通り過ぎるのを待てばいいんだよ」

   そんなことが続いたある時、今度はHさんの部署でトラブルが発生し、同じように社長から新ルールの指示がありました。Hさんはこれを部内に徹底し、継続して遂行するよう厳しい管理をしました。

   するとルール変更から2か月ほどして、後工程の業務で関わるI部長から、こんなことを言われたそうです。

「その面倒くさいやり方、いつまでやるんですか。社長も過去のトラブルは忘れているんだから、いい加減終わりにしないと。あなたのいた大企業と違って、うちでは優等生みたいな仕事は評価されない。我々には、我々がやりやすい要領がある。社長が怒ったら首を縮めて通り過ぎるのを待てばいいってことぐらい、そろそろ分かってくださいよ」

   これにはHさんは呆れてしまい、思わず社長のところに直訴に行きました。すると社長はため息まじりにこう言ったそうです。

「僕は自分の指示を、完全に忘れているわけじゃないよ。ただ、うちのような老舗で新しいやり方が定着しないのも、仕方ないのかなと諦めているところもある。長年のやり方を変えていくのは、並大抵のことじゃできないんだ」

   業歴70年、文句をつけてきたⅠ部長は社長より職歴が長い。職人気質の気難しい従業員も多くて手を焼いているとのこと。もちろん今のままでいいとは思っていないが、社員を束ねる管理職がヘソを曲げて社内が混乱しても困る。

   Hさんは、「社長がそれを許していたら、何も変わらないじゃないですか!」と強く訴えてはみたものの、困った社長の顔を見て私に打ち明けてみたようです。

現場に遠慮している社長ならハシゴを外される

   実はこの問題について、まだHさんに回答していません。最初はHさんが得意とする業務の抜本的な見直しに賛同しようと考えていました。社長の指示と現場のやり方がつぎはぎになっているところがあり、仕事のしくみを組み立て直す必要があると思ったからです。

   しかし、合理的なリエンジニア手法を進めようとしても、社長が現場に遠慮しているようでは、途中でハシゴを外されかねません。社長の指示が守られない本質的な理由は、結局はそれを許してきた「経営=社長」の姿勢にこそあるのではないかと思うのです。

   私はHさんに、まずは社長の姿勢の変化を明確に全社員に向けて示すことが必要だと言い、機会をいただけるなら私からも社長に意見を述べるつもりです。

   トップの問題意識を形にして示す方法は、「第二創業」でも「新たな挑戦」でもかまいません。とにかくこれまでの経営者の“モグラ叩き”的な姿勢を改め、「根本的な変化を起こすぞ」というトップの意思を社内に示すことが肝要です。

   それともうひとつ、反対勢力がある時には、その中心人物もまたプロジェクトに巻き込んで改革をすすめること。I部長含め古参社員の進退を決めるのは、それからでも遅くないでしょう。とりあえずHさんには、このような提案しておこうと思っています。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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