週刊現代2013.5.4号が、「日本の『幸せな会社』ベスト50」を掲載している。知られざる優良企業が選定されているかと思いきや、誰もが知る大企業がほとんどだ。
このリストを見たネットユーザーからは、「給料がよくて有名な会社に入れれば、幸せに決まってるじゃないか」「どうせ一生ご縁がないのだからどうでもいいや」などと冷ややかな反応があがっている。
支店長になれば「歓待の夜が続く」日本銀行
とはいえ、本当に全部が「幸せな会社」なのか。50社の中には確かに「働く人は幸せそうだ」と思える会社もある。「1日の労働時間は7時間15分。残業は一切禁止」で300億円近い売り上げを誇るのは、岐阜県の未来工業だ。
自宅が火事で全焼した社員に「再建費用を無利子で貸し出した」寒天国内シェア8割の伊那食品工業のエピソードからも、社員を大事にする経営がうかがわれる。
働く主婦のために昼休みを長く取り、自宅で掃除、洗濯、夕食の準備ができるよう便宜を図っている包装資材のタイセイという会社もある。
ただ、華やかな仕事上の「役得」を強調する職場の例を見ると、やっかみもあってか、その分、ちゃんと働いてもらいたいという気持ちも起こる。
「支店長になれば地元財界の王。歓待の夜が続く」(日本銀行)
「新興国では政府関係者よりも手厚く歓迎されることも」(国際協力銀行)
それに、日銀に入っても全員が支店長になれるわけではない。電通の社員でも「CMに出たいという俳優・女優に会わせてもらえる」ようなことに縁のない社員もいる。
野村證券の欄には「お金の付き合いは、どこかで(顧客と)裸の付き合いをするということなんです」という社員の声が紹介されているが、これって本当に幸せなのか…。
リストラ中のパナソニックに至っては、「実績を上げればV字回復の立役者の称号もついてくる」のがウリ。これでは「とらぬ狸の皮算用」も甚だしい。
対象読者は「就活生の親世代」
三井住友トラストHDやヤマトHD、サントリーHDなどは、平均年間給与が1000万円前後だが、これには社員と思われる人から「ホールディングス(持ち株会社)は高給社員の集まり。一般社員はそんなにもらってない」と抗議する書きこみもあった。
フジテレビでは「お台場本社近くのホテルに格安で泊まれる」というが、もしかしたらキツイ仕事の表れなのかもしれない。深夜残業で帰宅できなくなった社員向けの措置であれば、必ずしもうらやましいとは言えない。
週刊誌が5月の連休にこのような特集をする意味について、ある就職塾講師は「週刊誌の読者は就活生の親世代なので、興味にうまく応えている」と感心しつつ、こんな懸念を示している。
「こういう特集を見て、親が子どもに『お前、○○は幸せな会社らしいよ』とプレッシャーを掛けるんですね。でも、あがっている会社のほとんどは大企業ですから、子どもには全然アドバイスにならない。それよりも社会人の先輩として、『大きくなくてもいい会社はある』『人の幸せは就職先だけでは決まらない』と励まして欲しいところです」