2024年 4月 19日 (金)

従業員に横領されて泣かないために オーナーが守るべき5つのポイント

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   小売店のオーナーが、閉店後に売上金を専用バッグに詰めてスタッフに渡し、帰りがけに銀行の夜間金庫に入れるよう指示する――。よくある話だ。

   しかしこれは「現金の処理を従業員一人に任せるな」というリスク管理の鉄則に反する行為。オーナー自ら会社の資産を危険にさらしているのだ。実際、こんな横領事件が起きている。

   神奈川県警は5月13日、窃盗容疑で捕まっていた19歳の無職の少年を追送検した。新たな容疑は、業務上横領と軽犯罪法違反(虚偽申告)だ。

着服金はたいがい戻ってこない。未然防止が重要

日銭商売の店舗では狂言強盗にも注意
日銭商売の店舗では狂言強盗にも注意

   少年は、ガソリンスタンドに勤務していた昨年6月ごろ、夜間金庫に預けるよう渡された店の売上金約200万円をそのまま横領。それを隠すため、警察に被害届を出して「男に後ろから両膝を押され、バランスを崩した際にバッグを奪われた」などと嘘をついたという。

   帳簿の改ざん、レジの不正操作、集金記録のごまかしなど、横領隠ぺいの手口には様々なものがあるが、ガソリンスタンドやコンビニのような日銭商売の店舗では、このような狂言強盗にも注意が必要だ。

   「まさかうちの社員に限って」と思いたくなるだろうが、リスク管理に「あり得ない」は禁句だ。その証拠に、同じような事件報道には事欠かない。

・飲食店の店長(男性32歳)が、売上金十数万円を着服。自ら警察に「コンビニを出たところで、若い男の集団に殴られて店の金をかばんごと奪われた」と通報。怪しまれないよう、実際に友人に自分の顔を殴らせて偽装していた
・大手コンビニチェーンの店長(男性、28歳)が、売上金約60万円を着服。勤務中の午前2時半ごろ「目出し帽をかぶった2人組の男に押し入られ、売上金と防犯カメラのレコーダーを奪われた」と警察に通報。右手を自分で傷つけて強盗にやられたとうそをつき、うそがバレないようにレコーダーも盗んだとみられる

   捜査面で批判されることもある警察だが、さすがはプロ。現場検証や「被害者」の供述から、不自然な点にはすぐにピンとくるのだろう。狂言強盗は、たいていボロが出て捕まる。

   しかし、たとえ犯人が捕まっても、着服金はたいがい戻ってこない。実際、どちらの犯人も着服金をパチンコ、パチスロに使い切っており、店のオーナーは丸損だ。やはり、未然防止に越したことはない。

勤務初日に「当たり前だが重要なこと」を伝えているか

   毎度おなじみだが、店舗のオーナーや経営者は以下の点をセルフチェックしてほしい。

1.採用時に「やるべきこと、やってはいけないこと」をビシッと伝えているか。ルール違反には厳しく対応しているか

   わざわざ研修をしなくてもいい。勤務初日に5分でいいから時間を取って、「現金や個人情報の扱いはくれぐれも慎重に」「勤務時間は厳守すること」「無断欠勤は厳禁」など、当たり前だが重要なことをきちんと伝える。

   簡単な誓約書に署名させるのも効果的だ。そのときに「現金や商品を盗めば必ず見つかる。見つけたら容赦はしない。間違ってもバカなことは考えないように。カネに困ったら相談してくれ」と付け加えておくと、不正の抑止力を高めることができるだろう。

2.売上金や高額商品の扱いを、バイトや雇われ店長に任せきりにしてないか

   任せれば楽できるし、チェックのコストも削れるが、万一横領されれば一気に吹っ飛んでしまう。特にベテランなど「信頼できる」スタッフがオールマイティになってしまっている状況は要注意。経営管理においては「信頼しても放任しない」が鉄則だ。

   小企業のオーナーであれば「経理や在庫管理は絶対に他人にはタッチさせない」のが理想。スタッフに任せる場合は、抜き打ち点検もうまく組み込んで「見られている。不正は見つかる」という緊張感を高めたい。

3.適切なセキュリティ投資を行っているか

   小企業ではあまりコストを掛けられないだろうが、レジ回りなどには防犯カメラを設置することも必要だろう。スタッフには設置場所とその趣旨を採用時にきちんと説明しておく。

   ただし更衣室や休憩室など、スタッフのプライバシーが損なわれる場所への設置はNGなので注意が必要だ。その他、レジや経理システムへのアクセス制限なども検討したい。

根本的な対応はスタッフの労をねぎらうこと

4.スタッフが異常に気づいたら、オーナー・経営者に伝えやすい環境を整えているか

   「内部通報制度」というと仰々しいが、オーナー店舗であれば「まずいと思うこと、困ったことがあったらいつでも電話をくれ」とスタッフに自分の携帯電話番号を伝えれば、立派な内部通報制度になる。あとは日頃からお互いのコミュニケーションをよくとっておき、相談や要望を親身になって聴くことが重要だ。

5.普段からスタッフの労をねぎらっているか

   1~4のポイントは、どちらかというと性悪説的な立場に立って、不正の「機会」を与えないようにする対応だが、スタッフの感情に寄り添うことは、より根本的な対応といえる。会社やオーナーへの不満も不正の動機になり得る。逆に、仕事に満足とやりがいを感じているスタッフは不正などしようと思わないだろう。

   給料やバイト代をケチらないことも大切だが、スタッフのやりがいはカネだけでは買えない。上司から積極的に「おはよう」「お疲れさん」と声をかけ、小さなことでも「ありがとう」「助かるよ」「成長したね」「お客さんほめてたよ」と相手を認めるよう心掛けたい。

   最近読んだ本に、「あいさつは『あなたは大切な人』と伝える最良の手段」と書いてあった。正にその通りだと思う。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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