労働基準監督署にうまく動いてもらうための3つのポイント

「労基署は怠慢」と言いたい気持ちも分かるが

   理由は簡単で、労基署が抱えている案件が多すぎるためだ。彼らはひとつの案件を抱えるたびに、それにまつわる監督、指導、臨検、逮捕など、非常に多くの「やらねばならないこと」が出てくる。必然的に案件を抱えること自体に慎重にならざるを得ないのだ。

   限られたリソースで案件にあたるためには、当然ながら優先順位をつけなければならない。したがって、すべての案件にただちに時間を割いて対応する、というのはなかなか難しい。

   ブラック企業にまつわる議論にはしばしば、「労基署の怠慢がブラック企業をのさばらせている原因だ」という批判が出てくる。気持ちは分からなくもないが、まずはこのような現状であることを理解してから話を進めていきたいものだ。

   これを解決するためには労基署職員の数を増やすのが手っ取り早いのだが、なにぶんこのご時勢、公務員を大幅に増やすことは難しいだろう。

   民事上の問題では動いてくれないが、あらかじめ監督官が得意な労基法上の問題に絞込み、できるだけ証拠をそろえれば、緊急度、重要度の高いものであれば労基署だって動く。そんな特徴を正しく理解して活用したいものだ。(新田龍)

新田 龍(にった・りょう)
ブラック企業アナリスト。早稲田大学卒業後、ブラック企業ランキングワースト企業で事業企画、営業管理、人事採用を歴任。現在はコンサルティング会社を経営。大企業のブラックな実態を告発し、メディアで労働・就職問題を語る。その他、高校や大学でキャリア教育の教鞭を執り、企業や官公庁における講演、研修、人材育成を通して、地道に働くひとが報われる社会を創っているところ。「人生を無駄にしない会社の選び方」(日本実業出版社)など著書多数。ブログ「ドラゴンの抽斗」。ツイッター@nittaryo
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