2024年 4月 23日 (火)

なんと合否は学生が決める! ゆめみの「採用逆面接制度」

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「ここ3、4年は、面接をしていても、すごく受け身な学生ばかり。明確なビジョンも持っていないし、何よりも若さが感じられない。とにかく元気でチャレンジングな学生と出会いたい」

   そう語るのは、モバイルサービスの開発・運営などを行う株式会社ゆめみ総務人事部長の松田新吾氏。ユニークで面白い採用企画を打ち出し、それに対して興味を示して飛びついてくるような学生なら、「ちょっとモノの見方や考え方が変わっている面白い人物がいるかもしれない」と、どこか遊び心にも似た冒険心もチラッと顔を覗かせる。

面接官は学生。人事部長に質問を投げかける

「元気でチャレンジングな学生と出会いたい」が最初の目的(写真はイメージ)
「元気でチャレンジングな学生と出会いたい」が最初の目的(写真はイメージ)

   2012年度に採用した人事制度は、同社初の「逆面接制度」。松田氏が面接される側となり、学生が面接官という役回りで約40人の学生と「面接」した。

   フェイスブックを通じて「逆面接」にエントリーした学生のもとには、会社の事業について書かれた「ゆめみの履歴書」が送られる。学生自身の履歴書は不要であり、求められる個人情報は氏名と大学名のみだ。

   面接官である学生から、松田氏に対して質問が投げかけられる。質問内容には何も制限を設けなかった。一対一の面接。しかもほとんどの学生は面接をする側という経験には慣れていない。沈黙という場面での学生の戸惑い、焦りも、松田氏は敏感に肌で感じ取る。

   具体的に学生からは、どんな質問が出されるのか。松田氏はその内容次第で、学生の最終面接の行方までもが分かると語っていたが…。

「出てくる質問の多くは、研修制度はどうなっているのか? 初任給はどれぐらいか? 有給休暇の日数は…などの、ある意味、面接の場で質問しなくてもいいようなレベルのものばかり。それよりも私(ゆめみ)のこれからの方向性への考えであるとか、私(ゆめみ)が今、本気でやりたいと思っていることなどをダイレクトに質問でぶつけてほしい。心の中ではそう何度も叫んでいましたけどね」

   約40人からの逆面接を受けた後の感想としては、「自分が与えられるものに対しての興味、関心がすごく強い学生が多い」と、松田氏は語った。

全員が進んだ「最終面接」の結果は…

   逆面接のもう1つのポイントは「合否判定」の方法である。面接を受けるのは「株式会社ゆめみ」のほうであるから、合否判断を下すのは面接官の学生である。

「私が面接官である学生の合否を決めても面白くはありませんから、今回の逆面接では、学生がゆめみという会社に合格を出せば、その学生は最終面接に進めるという形にしました」

   結局、不合格を出した学生は一人もおらず、全員が「自らの意思」で最終選考へと進んだ。「半々ぐらいで合格、不合格に分かれるのかな、と予想していましたので、全員が合格というのは、ちょっと意外ではありました」と松田氏。

   逆面接の「合格者」は、通常ルートの1次、2次面接という段階を踏まずにいきなりの最終面接となる。しかも今度は面接する側からされる側に立場が変わる。学生は大きなギャップを感じたことだろう。

   さて、最終面接の結果は――。結論から言えば、現時点ではこの「逆面接」ルートからの来春入社予定の内定者は出ていない。

「今回、内定者は出ませんでしたが、この制度作りの最初の目的でもあった元気でチャレンジングな学生と出会いたいという部分では、手応えを感じました。どの学生も受け身というタイプではなかったですね」

   今回はエンジニア職の募集だったが、これがもし営業職であったなら、最終面接での結果も違っていたかもしれない。「募集職種によってはいい採用手法であると思います。それが証明できたのも、今回の収穫です」。松田氏は来年度以降の改良に自信を示している。

伊藤秀範(月刊「人事マネジメント」記者)

上場・中堅企業の人事・総務部門に多くのコア読者を持つ月刊ビジネス誌。専門性の高い著者・ベテラン記者らによる鋭利なコンテンツラインナップが評判。1991年創刊以来、これまでの取材先企業は1,000社を超える。本連載では月刊『人事マネジメント』掲載記事をJ-CAST会社ウォッチ企画として抄録し公開している。
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