2024年 4月 20日 (土)

アジアの億万長者の懐を、世界中がねらっている

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   経済が飽和しつつある欧米から、新しい市場としてのアジアへ進出する例が目立っています。日用品や外食のアジア進出はすでに進んでいますが、ついにアートもアジア市場をねらいに来ています。

   商品となるのは、ピカソやシャガールではなく、ダミアン・ハーストやリチャード・プリンスといった現代アート。名前を知らない人もいると思いますが当たり前です。そんな分かりにくい欧米のアート界のことなど、アジアの人たちは知っているわけがないのです。

アート・バーゼル香港に見る「本格化する欧米のアジア進出」

アジアで初めて開催された「アート・バーゼル香港」の様子
アジアで初めて開催された「アート・バーゼル香港」の様子

   しかし、いまアジアには億万長者が急激に増えています。とりわけ中国大陸やインドネシアには、ケタが違う金持ちが増えています。彼らは車を買い腕時計を買い、家を買いヨットを買ったところで、そろそろモノの消費に飽きて、アートを買いにくるだろうというわけです。

   特に、投資としても資産価値の上がる可能性のあるアートは、金持ちの買い物としては良いだろうといったところです。そんな中で、私は2013年5月22日から25日まで行われた「アート・バーゼル香港」に行ってきました。

   アート・バーゼルは、世界最大規模の現代アートフェア。今回は初のアジア進出です。モーターショーなどと同じような見本市ですが、出店者がギャラリー。自分のところの看板アーティストの作品を実際に持ってきて、会場で展示、販売します。

   普段は商品として意識されないアートが、ずばり値札がついた商品としてずらりと並ぶのです。普通の見本市と違うのがその値段です。十数万円程度のものから10億円はするだろうというものまで、とんでもない幅があります。

   なかでも今回は、バスキアという若くて死んだ伝説のアーティストの大きな絵がいくつか並べられていました。先日のオークションで約50億円の新記録をつくったアーティストで、売られている絵も、値段はわかりませんが、おそらく数億から十数億円といった値段のものなのでしょう。

   日本で何億円もの絵画をフェアに並べても、誰も買う人はいません。100万円の絵画ですら高すぎるのです。しかし香港なら、買う人が現れてもおかしくはありません。日本人作家でもそうで、草間彌生の1枚数千万円の絵が飛ぶように売れたと聞きました。

東京と香港のギャップの大きさは計り知れない

   香港は、すでにアジアの金融の中心地(ハブ)になっていますが、次はアートの取引でもハブを目指していく考えのようです。アートフェアと同時開催で、クリスティーズという海外のオークションが行われましたが、ここでも高額な絵画がオークションにかけられ、10秒で5000万円も値が上がるような光景が繰り広げられています。

   フェアの前日には、香港の中環(セントラル)にあるギャラリーが一斉にオープニングセレモニーを開催しました。来場者には無料でシャンパンが振舞われ、壁には何千万円という絵がかかっています。このギャラリービルは、ワンフロアの家賃が2000万円くらいだといいます。世界一家賃が高い香港でも驚愕の値段です。しかし、絵画が1枚売れれば、元が取れてしまいそうです。

   私が香港に行っている間に、猪瀬知事が「東京を香港のような金融センターにする」と言ったそうですが、東京と香港の間のギャップの大きさは、実際に目でみてみないと分からないと思います。

   最近は「クールジャパン」を官民で売りだそうという試みがなされています。欧米のアート界も「クールな欧米アート」を「中国やアジアのとんでもない金持ち」に売ろうと、香港までやってきてトライアルをしているところなのです。

   このトライアルが最終的にうまくいくのか、欧米の文脈のわかりにくいアートを中国の人が買うようになるのかは、まだまだ分かりません。しかし、すでに動いている規模は「クールジャパン」どころではなさそうです。(大石哲之)

大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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