なぜ希望する転職先からオーダーが来ないのか

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   知人に外資系食品メーカーで役員をしていたSさんがいます。それなりに輝かしい活躍をしていたのですが、現在は退任して転職活動中。人材紹介会社に登録したようです。

   ところが、希望する仕事のオファーがないとぼやいています。希望するオファーは「IT業界の経営者」。できれば法人向けの商材をもつ会社だとベストとのこと。

   何か違和感ありますよね? 食品業界の役員が、IT業界という異業界への転身を図りたいという無謀な話なのです。オファーが来ないのはもっともとしか思えません。

前職の業界に「出戻り」希望。しかし声が掛かるのは…

「みんな、どうして僕のことをわかってくれないのでしょう」
「みんな、どうして僕のことをわかってくれないのでしょう」

   ところがSさんからすれば、違和感のない転職希望のようです。その理由は過去の経歴にありました。Sさんは最終経歴こそ食品業界勤務ですが、前職ではIT業界で活躍した輝かしい過去の経歴があるのです。

「大手総合商社の情報通信部門に入社。ソフトフェアの輸入や販売業務に関わる子会社で営業課長を歴任。100億円規模にまで成長させた商材も多数あり」

   しかしSさんは、ヘッドハンターから声がかかって異業界に転職。なぜそのような畑違いの転職ができたのか。会社としてはSさんの「華麗な経歴」を踏まえ、異業種で活躍する可能性に賭けたようです。

   一方でSさんは、前職に比べて待遇面で大きく上がることが決断の背景にありました。ところが新しい業界の水が合わなかったようで、2年で転職を決断。元のIT業界に戻るべく画策しているのですが、これまでオファーされたのはすべて「食品業界の立て直しに関わる仕事」ばかりと、ため息をついて嘆いていました。

「みんな、どうして僕のことをわかってくれないのでしょう。商社時代の人脈は、今でも十分に活かせる状態にあります。いや、取引先の部長が役員になっていたりと、むしろ有益な人脈になっていますけどね」

   分断したのはキャリアだけで、人脈やノウハウは失っていないと確信をもっているようです。しかし、世の中の人は「外資系食品メーカーで成功した人」という直近の経歴だけを見て仕事を依頼するのです。

   私はSさんに「IT系の仕事で活かせる自分の強みをアピールしないとダメですよ」とアドバイスしたことがあります。ところが答えは「そんなの僕の経歴を見ればわかるじゃないですか」というものでした。

自信のある人は「他人に伝えること」をおろそかにする

   自分のスキルや経験、人脈が「有用」であると思っていても、それが自分の希望する場所で売り物になるかどうかは、他人にはなかなか伝わらないものです。

   よほど丁寧にアピールしないかぎり、他人に認めてもらうことができない――。そんな当たり前のことが理解できないケースは、実は非常に多くあるのです。特に自分に自信がある働き盛りの人に、ありがちのことです。

   他人は1人の経歴を、そこまで深く掘り下げて考えないものです。では、Sさんはどうしたらいいのか。やはり相手に自分の考えを相手に伝え、自分のために動いてもらえるような戦略的なアピールを仕掛けるべきでしょう。

   具体的には、「やりたいこと」を明確にし、それを「なぜやりたいか」という理由を説得力ある形で整理することが必要です。それを、アピールを聞いた人が思わず「それは、そうだ。その通り」と納得できるシナリオに組み立てられれば、成功に近づきます。

   Sさんの場合は「法人向けの商材をもつ会社で営業部長をしたい」ということと、「今すぐにでも活かせる人脈があるから」ということがポイントになります。あとはひとこと、「あなたのような素敵な方に相談ができて光栄です」と添えておくことも大事です。

   Sさんが新しい職場で仕事をしたい理由と会社の課題と一致すれば、転職成立の可能性があります。アピールを戦略的に仕掛けることは、転職だけでなく日常の仕事においても必要です。うまく心がけて「やりたいこと」の実現を近づけてください。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。「高城幸司の社長ブログ」
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