なぜ偉い人たちは「電話相談窓口」が大好きなのか

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   なんでも、厚生労働省がブラック企業対策として「無料の電話相談窓口」を設置するらしい。別にそれ自体は悪い話ではないと思うが、筆者がその話を聞いて真っ先に連想したのは、かつて連合が設置した「非正規雇用労働者の電話相談窓口」だ。

「好況時には賃上げを獲得しつつ、不況時には非正規側に雇い止めを押しつける正社員労組は、実は非正規雇用労働者を搾取してるんじゃないか」

と派遣切りの際にさんざん叩かれた際に、慌てて彼らが設置した電話相談窓口のことだ。ブラックと非正規雇用とテーマは違えど、筆者はこの2つの電話相談窓口は本質的には同じものだと考えている。それは“アリバイ”である。

「電話相談窓口」は既得権を守る「アリバイ作り」に最適

   大組織やお役所で生きる人たちにとって、何より重要なのは「失点しないこと」だ。そういう世界では基本的に勤続年数に応じて処遇が上がっていくためだ。

   つまり、彼らにとっては無理して得点を狙うより、失点しないように守備を固める方が合理的となる。これは組織内で働く個人だけではなく、すでに何かしらの既得権を持っていて、とにかくそれを失いたくないというグループにも当てはまる。

   では、失点しないために何が必要かというと、それはアリバイである。何かしら問題があって困っている人もいるのだろうが、こっちはちゃんとやることはやってますよ、だから不可抗力なんですよ的なアピールができるアリバイさえあれば、彼らの守備は鉄壁である。

   そういう文脈で電話相談窓口を考えてみよう。

「正社員の非正規雇用の格差を是正しろ!」
「連合は非正規雇用労働者たちと(電話相談窓口作って)ちゃんと共闘してます」
「お上はブラック企業を野放しにするのか!」
「(電話相談窓口作って)全力で問題に取り組んでます」

最も足りないのは「問題を解決しようという意志」

   筆者の見るところ、電話相談窓口は典型的なアリバイ作りのためのアクションである。そもそも、すでに問題提起をしている人たちがちゃんと存在しているわけで、いまさら“窓口”という形でボールを投げてよこさせる必要などないはずだ。

   必要なのは問題を提起されている彼ら自身が主体的にアクションを起こすことであって、そのための処方箋はとっくに大勢の識者たちが作ってくれている。彼らに最も足りないのは、問題を解決しようという意志だろう。

   それでも、借金のかたに山奥で怖いお兄ちゃんに監禁されて働かされているような人にとっては、意味のある窓口かもしれない。だから筆者も全否定はしない。

   ただ、恐らくこの問題に最も関心のある層であろう「普通の職場に普通に就職したはずなのに、なぜか過労死認定基準を越えて働かされている普通の社会人」にとっては、残念ながら状況は一ミリも前には進まないはずだ。(城繁幸)

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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