世界中に家族を分散 中国人の「サバイバル戦略」

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   アート関連の取材で香港に行ったときのこと。たまたまパーティーで隣り合わせた人に、家族の話を聞いたことがあります。その方は、年に一度の家族総会を開きます。世界中から家族や血族が集まって、皆の無事を祝い家族の発展を祈るのだそうです。

   「世界中から集まる」というところが理解できないかもしれませんが、その方の家族は米国やカナダ、オーストラリアと中国に散らばっています。今回の集合場所は香港でしたが、前回はシドニーだったそうです。

国も会社も、隣人すらも信用できない

「国を捨てて世界中のどこでも生きていける」のが最大のリスクヘッジ
「国を捨てて世界中のどこでも生きていける」のが最大のリスクヘッジ

   なんでそんな事になっているのか。日本でもお盆や正月に親戚が集まることはありますが、華僑の場合は、それが世界規模に散らばっています。

   「華僑の人は家族を大事にする」と聞いたことがあると思います。何よりも血のつながりを大事にするということですが、これは日本的な意味での血のつながりとはまた違っていて、もっと現実的です。

   中国では昔から政権がコロコロ変わり、皇帝が入れ替わる度に過去の政権の人は追い出されました。政府によって資産を没収されるのは日常茶飯事。中国人は政府をほとんど信頼していないのです。

   そして、会社も信頼していない。せいぜい仕事をするときに一時的に関係するもので、日本のように人生の大部分を占めるということはあり得ません。

   ついでに、盗んだり騙したりする同じ地域に住んでいる他人も信用できません。政府も会社も隣人も信頼できないので、唯一信頼できるのは血で繋がった血族だけです。

   そんな華僑にとって、最大のリスクヘッジは何でしょうか。「いつ政府がつぶれたり戦乱が起きたりしても、国を捨てて世界中のどこでも生きていける体制」。これが彼らにとっての最大の安心材料なのです。

   そのため、彼らは子供を世界に分散させます。3人子供がいたら、1人は米国の大学に行かせてグリーンカードを取ってもらう。もう1人はオーストラリアのシドニーへ。もう1人は中国本土で事業家に。そして世界で何が起こっても、子供や兄弟を頼りに安全なところに逃げ込むのです。

国や会社に寄りかかる日本人との違いに驚愕

   こういう話を聞いた時に、私は2つの意味で驚きました。

   ひとつは、余りに日本人と違う発想とその厳しさにです。国家や会社に寄りかかり、なんとかしてしがみつくという発想の日本のサバイバル方法に比べて、あまりに異質です。

   そして彼らの自己責任ぶり、頼らないでやっていくという厳しさをくぐり抜ける自覚に驚きました。そして2つめは、それがいまのグローバルで不安定な時代に巡りめぐってマッチしているということです。

   国や会社が頼りなくなった時代、グローバル化が進んでいる時代、不安定で経済危機が多発している時代――。これらの時代に世界中に家族のネットワークを持ち、いろいろな場所を移動しては生きていく彼らの生き方は、まさに永遠に移動する「本物のノマド民」なのかもしれません。(大石哲之)

大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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