「社員の事故」でメディアに追われる! 無料で広告してくれる人かと思っていたのに

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   しばらく前のことですが、関西で中堅飲食チェーンを運営するG社長から電話がありました。従業員が仕事休みの日に飲酒運転で事故を起こして逮捕され、新聞やテレビの記者から追いかけまわされているのだがどうしたらいいか、という相談でした。

   G社長とはある会合でお目にかかり、うちの会社が運営する「青山カレー工房」のような弱小カレー店が何度もメディアに取り上げられていることを知り、どうしたらそんなことができるのか教えて欲しいと近づいてこられたのでした。

「プライベートだから関係ない」と突っぱねていたが

メディアも取引相手。信頼関係が大事
メディアも取引相手。信頼関係が大事

   それ以来、メディアに取り上げられる話題の作り方から、ニュースリリースの作成方法、メディアとの接点の持ち方や記者との付き合いまで、いろいろとお話をしました。

   それを参考にして、G社長の会社も年に数回は新聞や雑誌にも取り上げられるようになった、そんな矢先の事故だったようです。新聞・テレビ各社から「会社側の従業員教育の責任をどう考えるのか」と厳しく追及されて、

「いつものお店やキャンペーンの取材姿勢とは打って変わって…。マスコミの連中と言うのは恐ろしい。うっかりしゃべったら、何を書かれるか分かったものじゃない」

と怯えているようでした。

   社長自身は今回の事件について、「従業員が起こしたとはいえ、あくまでプライベートなもの。会社が責任を問われる筋合いはない」と考えていました。そして、こういう時は悪いイメージを払拭するために「何かリカバリーショットでもした方がいいのかな」と相談してきたのでした。

   しかし私は全く違う考えでした。プライベートな事件とはいっても、会社の従業員が起こした事件ですから、会社の見解は求められて当然。それを逃げ回ってしまうのは逆効果ですし、「事件を忘れさせるリリース」なんて出したら火に油です。

   私が銀行で広報担当をしていた時に、こんな事件がありました。行員が紛失したと思われる顧客リストをネタに、銀行が脅迫されたのです。ある新聞にスッパ抜かれて大騒ぎになり、私たち広報部門の意見は「会見すべし」だったのですが、上層部は「話すべきことはない」とノーコメントを決め込むことにしたのです。

一方的に利用していると「しっぺ返し」が待っている

   鳴りやまない電話の嵐の中、私が仲良くしていた記者から厳しい忠告が入りました。

「大関さん、銀行の上の方々は間違っているよ。都合のいいことだけを書いてもらおうと思うのなら、新聞はそちらのリリースネタも含めて今後一切何も書きません。我々を利用する目的でお付き合いをしていただけなら、信頼関係はゼロじゃないですか」

   そして、このままなら「銀行はそういう姿勢で顧客とも向き合っているのだ」と書きますよ、と啖呵を切られたのです。

   これは大変なことです。当事者がノーコメントを貫き通す間にメディアがあることないこと書きたてたら、企業のイメージダウンは決定的になってしまいます。私はあわてて上層部にこのやり取りを話し、緊急会見を開くことで何とか事なきを得たのでした。

   この手のマスコミへの対応ミスで致命的ダメージを受ける例は、世の中に多く存在しています。私もG社長に、「一方的に利用されていると相手が思うなら、信頼感は損なわれて痛いしっぺ返しが待っています。すぐに取材をしてきた記者に会って、会社としてのコメントを出すことです」と忠告しました。

   社長は電話口でしばらく黙っていましたが、

「マスコミを『無料で広告をしてくれる相手』としてしか見ていない、その考え方を改めないといけないと言っているんだね。分かりました。よく考えて行動を決めます」

   そう言って電話は切れました。その後、連絡はありませんが、数か月後にテレビ番組でG社長のお店が久しぶりに紹介されているのを目にしました。きっとメディアに誠意ある姿勢を示し、関係を修復したのだろうと思います。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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