2024年 4月 26日 (金)

「できません」が口グセの新入社員 異動の理由にしてもいいか

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   元気があれば何でもできる。目標訪問件数を倍増ダーー!――こんな、アントニオ猪木氏を彷彿とさせるような上司だと何かと大変そうだが、部下がことあるごとに「できません」を連発する職場というのも意気があがらないようだ。

   「本人の育成のためなのに…」。与えた課題に対して「できない」を繰り返す新卒社員に不満を抱える課長が、この社員を異動できないものか、と人事部に相談。担当者は、どうしたものかと迷っている。

課長「これじゃあチームワーク成り立たない」

   ――製造業の人事担当者です。営業部の課長がやってきて、「うちの部署に来たAが使えないから、異動させてもらえないかな?」と要望してきました。

   営業に配属された新卒のAくんはOJTも終わり、この秋から担当顧客と新規開拓を任せることになりました。仕事はそつなくこなしていますが、問題は課長がAくんの育成のために出した高いハードルの課題をことごとく「できない」と断るのだそうです。

   課長が「これから半年の顧客訪問件数は、月間60件を目標にやるぞ!」と言うと、

「えー!? 今でも月40件がやっとなのに、60件なんてできるわけないじゃないですか。先月の訪問件数トップのB先輩が45件ですよ。非現実的な目標だと思います」

と反論します。また、「今やっている技術勉強会のペースを上げよう。来週の発表担当者からは、1週間に30ページずつ勉強して順番に発表してもらう」と言うと、

「今でも残業に加えて勉強会で負担なのに、これ以上いつ勉強するんですか。これ以上残業が増えたら、プライベートの時間が犠牲になってしまいます」

と受け入れる姿勢を見せません。

   課長は「言うことを聞かないやつがひとりいると、課員への影響もある。これじゃあチームワークが成り立たない」と困り果てている様子。しかし、入社して半年で異動というのも変ですし、課長をどうサポートしてあげればよいのか迷うところです――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「仕事なのだから上司の命令だ」とやらせればいい

   Aくんの勤務態度を理由に、異動をするのは会社の人事権の範囲内です。しかし「やる気が起きないからやらない」ということを認めたまま異動させても、Aくん自身が何も変わっていない限り、他部署で似たような問題を起こす可能性は高いでしょう。これでは本質的な解決にはなりません。「できない」を連発したとしても、「仕事なのだから上司の命令だ」と言ってやらせればいいと思います。

   就業規則の懲戒事由には「正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき」と定められていると思います。まずは「できません」と言うのをやめさせることから指導をしていく必要があります。指導しても改善されなければ、業績評価は低くせざるをえません。指導を繰り返しても直らないようであれば、業務命令に従わないとして懲戒処分などのペナルティを課したり、場合によっては退職勧奨を検討することになると思います。

臨床心理士・尾崎健一の視点
パワハラと言われかねないので注意が必要

   課長はきっと、優秀な新卒社員を前に、大きな期待をかけているのでしょう。しかし、それが本人にとっては重荷になり、かえってモチベーションを下げることになりかねません。目標というのは、組織として必要な数字という以外に、本人にとって達成可能性がなければやる気を削いでしまいます。いくら業務の範囲とはいえ、どうみても達成不可能な数字を押し付けるようなら、パワハラと言われかねないので注意が必要です。

   一方、本人の能力を見極めたマネジメントであれば、必ずしも前例や他人との比較ではない高い目標や課題を設定することは、悪いことではありません。先輩ができない水準を、新人が新しいやり方でクリアすることもありえます。「期間限定で試してみないか」と提案し、例えば1か月間、上司が設定した目標に向けて、精一杯やってみる。その後で会社の支援や自分の限界を把握した上で話し合えば、お互いの合意点が見いだせるのではないでしょうか。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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