記者と「人として」の付き合いを 社長にオススメするこれだけの理由

印刷

   中堅・中小企業の社長さんには「取材にきてくれた記者さんとは、3か月に1度くらいは電話して、昼食でもご一緒にと誘ってください」とアドバイスしている。企業トップが記者と「人として」お付き合いできれば、企業を深く理解してもらうことにつながるし、記者からいろいろな話も聞ける。

   昨今のように、冷凍食品に農薬が混入されたり、アルバイトの悪ふざけ写真がインターネット上に掲載されたりするご時世では、いつ何時、不祥事に見舞われるか分からず、記者と懇意にしていれば危機対応の面でも相談できる。また、記者は1~2年で担当替えになるケースが多く、普段からまめに接触することは、次の担当記者に引き継いでもらえるメリットもある。良いことづくめだ。

社長は、社員に言えない悩みを数多く抱えている

   私は、日刊工業新聞社で編集一筋25年間、勤務した。駆け出しは城南支局(現南東京支局)だった。その時に忘れえぬ経営者がいた。エイト産業(東京都大田区)の岩船逸雄社長(当時)だ。同社は1980年代後半、VTRやオーディオに使われる半導体を検査・調整する機器を開発し、ソニーや韓国サムスンに納めていた。当時、サムスンの高画質VTRは故障なく製品を完成させる歩留まり率が90%程度で、エイト産業の機器を大量に購買して歩留まり率を引き上げた。サムスンの社史にもエイト産業の名前が書かれていると聞き及んでいる。

   その岩船社長が、夕方になると「飯でも食おうよ」と電話をかけてくる。酒は飲めないのにカラオケ好きで、よくスナックにも連れていってもらった。私の仕事につながる面白い情報も話してくれた。その後、私が電機業界担当になった時には、2人で画策してソニーとサムスンの重役同士の会食をセットしたこともある。ギブ・アンド・テイクにとどまらない「人として」のお付き合いは、その後ずっと続いた。経営者は孤独だとよく言われる。社長は、社員に言えない悩みを数多く抱えている。私との付き合いは、孤独感を癒す面もあったと思う。

   ネット上で大量のニュースが見られるようになり、最も多くの記者を抱えている活字メディアでは記者が減り、担当を掛け持ちするなど余裕がなくなっている。しかし、それでも取材の本質はフェイス・ツー・フェイスであり、企業経営者からの昼食の誘いを拒む記者は少ないはずだ。記者との接点を増やせば、さまざまなメリットがある。ぜひ人間関係を構築していただきたい。

   ところで、エイト産業の岩船逸雄社長は60代の若さで惜しまれながらこの世を去り、いまはご子息の伸介氏が社長を継いでいる。この伸介氏がまたすごい。業態をFA(ファクトリー・オートメーション)にシフトし、親父の残した負債を着々と返済している。製造現場の見える化を推進し、サーバで工程管理や生産管理ができるシステムを開発、パナソニックグループなどに納めている。ものづくりを支える企業として、若手経営者のネットワークも築いている。うれしいことに、お付き合いは親から子に引き継がれている。(管野吉信)

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
  • コメント・口コミ
  • Facebook
  • twitter
コメント・口コミを投稿する
コメント・口コミを入力
ハンドルネーム
コメント・口コミ
   

※誹謗中傷や差別的発言、不愉快にさせるようなコメント・口コミは掲載しない場合があります。
コメント・口コミの掲載基準については、コメント・口コミに関する諸注意をご一読ください。

注目情報PR
追悼

お知らせ

電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中