2024年 4月 19日 (金)

「軽度のうつで出勤」社員に周囲から不満 好不調激しく「フリーダムすぎる!」

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   うつ病などで会社を休んだり、ならし出勤をしたりする人が増えている。「心の病」の労災認定は、昨(2012)年度まで3年続けて過去最多を更新している。

   医師から「配慮しながら就労可能」と言われた社員が出社している場合、周囲は温かく見守りたいところだが、その就労状況によっては、他の社員の間に不満が広がるケースもあるようだ。不満が顕在化してきた場合、人事担当者はどう対処すれば良いのだろうか。

「休ませた方が良いんじゃないか?」の声も

   システム会社の人事です。軽度の精神疾患の社員について悩んでいます。

   開発部のAさんは精神疾患系の体調不良だそうですが、出勤しています。

   診断書によると「うつ状態 残業は不可などの配慮をしながら就労は可能」とのことです。

   週に2日くらいは遅刻し、早退もときおりあるものの、欠勤は1日もありません。

   今は人員不足と言うこともあり、猫の手も借りたいという状況であることから、そこまで病状が重度でなく、仕事ができる状態ならば手伝って欲しいという状況のようです。

   Aさんも病気とは言え、休むよりは少しでも仕事をしている方が良いという希望でもあるため、勤務時間を調整しながら出勤してもらっています。

   しかし、調子の良い時と悪い時が顕著のようで、調子が良い時は通常通り仕事ができるようですが、調子が悪い時はかなりの時間、机の上に突っ伏して寝ているようです。

   この状況を良しとしない社員もいるわけで

「あんなに自由な感じで仕事をしているのを許すなんて、会社としていいのか?」
「病気なんだから休ませた方が良いんじゃないか?」

という風に不満も出ているようです。自分たちの士気にもかかわる、というわけです。

   一方でAさんを擁護する声もあり

「そこまで重度でもないし、本人の希望でもあるんだから周りがフォローすればいいんじゃないか」

と言っています。

   ただ、擁護論や本人の希望もあるとはいえ、不満の度合いは会社として見過ごすことはできないレベルまで高まっているように感じます。どうすればいいでしょうか?

社会保険労務士 野崎大輔の視点
診断書はあくまで参考に、就労可否は会社が判断

   メンタル不全の社員の就労の可否については勤怠の実態で判断します。週に2日遅刻して、就業時間中も仕事ができないことがあるという状況は正常に勤務しているとは言い難く、休職させて治療に専念させた方が良いと思います。

   医師の診断書で「就労可能」と記載されていても、それは参考にすればいいわけで、就労の可否は最終的には会社が判断すれば良いと思います。医師は病状は判断できますが、本人の仕事の実状を把握しているわけでもありません。放っておくと周囲のモチベーションも下がり、生産性の低下にもつながります。

   今は病状が軽度だったとしても、このままだと悪化するおそれもあり、その時は会社の安全配慮義務を問われる可能性があります。今は会社と本人が良好な関係だとしても、病状が悪化して働けなくなってしまったり、精神的に不安定な状況に陥ったりした場合は「会社のせいでこうなったのだから責任を取れ」と言われるかもしれません。本人の希望で良かれと思ってやっていても状況が変わってしまうこともあるので、気をつける必要があるのです。

臨床心理士 尾崎健一の視点
本人承諾の上、周囲に「病気」に対する正しい情報提供を

   問題を、「本人の仕事の生産性の低下」と「周囲の人の病気に対する情報の不足」の観点から捉える必要があります。

   生産性の変動があるのは病気(または治療のための薬)がどの程度影響しているかを主治医に確認する必要があります。主治医の判断で就労可能とのことですが、主治医も業務の負荷や職場での状況を正しく把握していない可能性もあります。上司や産業保健スタッフから会社での様子を情報提供したうえで主治医の意見を求めましょう。現状の負荷に耐えられないとなれば業務量を減らしたり休職させたりすることも検討します。

   一方、周囲の人が病気に対して情報や理解の不足があれば、正しい情報提供が必要です。「病気の特徴」「薬の副作用」「快復の見通し」「必要な配慮」などを産業保健スタッフを中心とした専門家から説明してもらうとよいでしょう。公平性という観点から、周囲の業務量と差が大きい場合は、量と報酬のバランスを調整するケースもあります。

   なお、主治医との連携や周囲への説明の際に、本人の同意をとり本人の意思を尊重して行わないとトラブルのもとになりますので注意しましょう。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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