2024年 4月 27日 (土)

頻繁な私用電話で「仕事」進んでない! 全社的に一切禁止すべきか

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(職場で)「A君は?」「ご家族から、またケータイに電話が入ったみたいです」「そうか、またか。大変そうだな」―――「ところで、A君は?」「まだご家族と電話中のようです」「そうか」―――「A君、A君?」「また家族と電話中です」「……(ブチッ)」

   職場によっては、勤務時間帯は「私用電話一切禁止」のところもあるだろう。一方で、「常識の範囲内で」と緩やかな運用をしている職場もある。そんな職場で、「常識」を逸脱する社員が出てくると、周囲に不協和音が広がってくる。

「私語」も禁止しないといけなくなる?

   製造業の人事担当です。先日、経理部門の課長が人事部にやってきました。

「最近、うちのAが仕事中にしょっちゅう席をはずすので、軽く注意したんだが、どうも家族から携帯に電話がかかってきているようだ。その後も、陰でこそこそ話している」

   どうも、詳しく聞いてはいけない雰囲気があり、事情も分からず厳しくは注意できずにいるとのことです。

「家族のごたごたならいずれ落ち着くのだろうと放っておいたのだが1か月たっても改善の様子がない。彼の担当業務が遅れ、必要な時にいないなど周りからの不満が出ている。個人の事情にあまり立ち入ることはできないので、ここは全社的に『仕事中の私用電話一切禁止!』とかルール化できないかな…」

と、全社で通達してほしいという人事への依頼です。

   現状は、ある程度の私用電話は許容しているのが実情です。しかし、仕事に影響が出ているとなれば別です。会社としても何か取り組まなければならないと思いますが、「私用電話禁止」とか言い出すと「私語禁止」とか「休憩時間は15時に10分間」とか、細かいことまで言わないといけなくなると少々及び腰になっています。

社会保険労務士 野崎大輔の視点
職務専念義務違反として注意することができる

   原則として就業時間中の私用電話は禁止でしょう。従業員は労働契約を締結することにより、契約書に記載された労務提供義務を負うとともに、付随して職務専念義務を負います。しかし、「就業時間中は仕事以外のことを一切するな」と職務専念義務を完全に守らせると、職場はギスギスしてくると思います。

   雑談も職場ではコミュニケーションの潤滑油となる効用はあるので、私語禁止など細かく注意する必要はなく、原則論を伝えてあとは判断に任せるという風にした方が良いでしょう。現状のように多少の私用電話を許容するのはアリだと思います。

   しかし、業務に支障が出ているのであれば話は別です。就業時間中の私的行為により業務に支障が出ているのは、職務専念義務違反として注意することができます。あまりに電話が多いのが目立つということであれば、個別に呼び出して話を聞いてみてはいかがでしょうか。問題を共有すれば、解決できることもあるかもしれません。

臨床心理士 尾崎健一の視点
まずは上司として支援する姿勢を見せる

   本件だけで、一律に私用電話を禁止するのは問題の解決になりません。古き良き時代であれば、課長がAさんの相談にのって、家庭問題に対して会社として出来る範囲の協力や情報提供をして問題解決していた類のものでしょう。それが今では、上司が部下のプライベートな問題を共有したり、そこに介入したりすることは著しく減少しています。本ケースで、まず上司が取るべき行動は、上司が支援する姿勢を見せて、「話を聞かせてくれ。困ったことがあったら力になる」と言ってみることです。

   それでも、会社の上司には話せない内容もあります。無理に聞き出して、こじらせるより「本人から言える状態」になるまで待つことも相手を大切にする意思表示です。そんな時は、仕事の上司としてすべきことに焦点を当てます。個人的事情は深追いせず、仕事の生産性が低下している問題に注目しましょう。「業務が滞っている」「必要な時にいない」などの仕事上の具体的問題があることを合意し、改善のために何をすべきかを話し合うことです。そんな話し合いと仕事の支援を続けるうちに個人的事情を話してくれることもあります。周りも生産性が回復すれば文句はないはずです。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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