2024年 4月 19日 (金)

IT駆使して「老舗イメージ」覆す 100年企業、「次の100年」への挑戦とは

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   ニュースの価値は、新しければ良いといいものではない。昔からのしきたりや伝統・文化、古都、あるいは民族が受け継いできた価値観などは、それ自体がニュースのベースとなり得る。企業でいえば“老舗”である。

   富士フイルム(旧:富士写真フイルム)のように、銀塩の写真フィルムで一時代を築いた企業が、デジタルカメラの普及に伴って化粧品事業に華麗に転身したストーリーは、多くの人が興味を抱くニュースとなる。中堅・中小企業にも、時代を取り込みながら輝きを増す“老舗”がある。

三社祭をスマートホンにリアルタイム多次元中継

   東京・浅草の浅草神社前に本店を構える祭り用品専門店の浅草中屋(会社名は中川)の創業は明治43年(1910年)。100年を超える老舗である。同社のビジネスモデルは、IT(情報技術)によって日本全国でリアルな取引を可能にするとともに、商品企画から製造、消費者までの商流を確立し、祭り用品という季節商品を通年商品に変えること。三社祭をスマートホンにリアルタイム多次元中継し、スマホで人気投票する仕組みを構築するなど、とくにIT活用では異彩を放ってきた。経産省が実施する中小企業IT経営力大賞の審査委員会奨励賞を2度にわたって受賞したほか、2013平成25年の中小企業白書の事例紹介企業となり、東京都台東区のしたまちTAITO産業省も受賞するなど、祭り用品の老舗のイメージを大きく覆してきた。

   祭り用品には名前札、巾着、手拭、ゴム底足袋など比較的安価で小さな商品も少なくない。送料は通常全国一律756円(送料込み)に設定しているが、これだと商品価格を上回る送料がかかってしまうケースも出てくる。そこで同社では送料164円(同)のメール便を導入するなどキメ細かな対応を図っている。通年商品としては、手拭生地でつくった和風テディベアといった観の「てぬぐま」が人気を集め、浅草中屋の知名度向上にも一役買っている。

   同社はすでに、戦略的Web通販の構築、スマホ・タブレットの有効活用、サーバ群のクラウド化、クレジット決済の外部委託を終えている。こうしたプラットホームを生かして、同社の中川雅雄社長が考えているのは、関連企業や自治体を巻き込んだ伝統文化継承の総合Web通販だ。100年企業の次の100年に向けた挑戦が始まっている。

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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