IT駆使して「老舗イメージ」覆す 100年企業、「次の100年」への挑戦とは

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   ニュースの価値は、新しければ良いといいものではない。昔からのしきたりや伝統・文化、古都、あるいは民族が受け継いできた価値観などは、それ自体がニュースのベースとなり得る。企業でいえば“老舗”である。

   富士フイルム(旧:富士写真フイルム)のように、銀塩の写真フィルムで一時代を築いた企業が、デジタルカメラの普及に伴って化粧品事業に華麗に転身したストーリーは、多くの人が興味を抱くニュースとなる。中堅・中小企業にも、時代を取り込みながら輝きを増す“老舗”がある。

三社祭をスマートホンにリアルタイム多次元中継

   東京・浅草の浅草神社前に本店を構える祭り用品専門店の浅草中屋(会社名は中川)の創業は明治43年(1910年)。100年を超える老舗である。同社のビジネスモデルは、IT(情報技術)によって日本全国でリアルな取引を可能にするとともに、商品企画から製造、消費者までの商流を確立し、祭り用品という季節商品を通年商品に変えること。三社祭をスマートホンにリアルタイム多次元中継し、スマホで人気投票する仕組みを構築するなど、とくにIT活用では異彩を放ってきた。経産省が実施する中小企業IT経営力大賞の審査委員会奨励賞を2度にわたって受賞したほか、2013平成25年の中小企業白書の事例紹介企業となり、東京都台東区のしたまちTAITO産業省も受賞するなど、祭り用品の老舗のイメージを大きく覆してきた。

   祭り用品には名前札、巾着、手拭、ゴム底足袋など比較的安価で小さな商品も少なくない。送料は通常全国一律756円(送料込み)に設定しているが、これだと商品価格を上回る送料がかかってしまうケースも出てくる。そこで同社では送料164円(同)のメール便を導入するなどキメ細かな対応を図っている。通年商品としては、手拭生地でつくった和風テディベアといった観の「てぬぐま」が人気を集め、浅草中屋の知名度向上にも一役買っている。

   同社はすでに、戦略的Web通販の構築、スマホ・タブレットの有効活用、サーバ群のクラウド化、クレジット決済の外部委託を終えている。こうしたプラットホームを生かして、同社の中川雅雄社長が考えているのは、関連企業や自治体を巻き込んだ伝統文化継承の総合Web通販だ。100年企業の次の100年に向けた挑戦が始まっている。

知る人ぞ知る鉄道ダイヤ印刷のトップメーカー

   一方、昭和22年(1947年)創業のセキュリティー(偽造防止)印刷、特殊印刷会社である昇寿堂(東京都中央区新富)は、知る人ぞ知る鉄道ダイヤ印刷のトップメーカーだ。鉄道マンが携行する鉄道ダイヤは始発から終電までの運行情報がびっしりと書き込まれ、印刷の長さは4メートルにも及ぶ。これをコンパクトに折りたたんで携行するわけだ。この印刷は簡単ではない。長尺印刷ができなければ、そもそも作れないし、どのように構成し、どのように折りたたんで使いやすくするかといったノウハウが集積されている。

   同社はまた、セキュリティー印刷においても官公庁や自治体から大口の受注を得ている。偽造防止にはコピーガード、ホログラム、実線グラデーション、マイクロフォント、ラインスクリーン、レインボー、透かしなどのさまざまな技術を要する。社員証、会員証、健康保険者証、サッカーや野球などの入場整理券などの幅広い分野で、こうした技術が使われている。同社は東通研(東京都豊島区)が開発した低電力型紫外線照射装置を導入し、電気代を約70%削減するとともに、二酸化炭素(CO2)排出を大幅に減らしている。印刷業界は紙の削減を受けて、経営環境は楽ではないが、攻めの経営により老舗が輝き続けている。(管野吉信)

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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