「バス手配忘れでウソ手紙」事件、悪いのは本人だけか 不祥事における組織・上司の問題

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   4月末に発覚した、大手旅行代理店の男性社員A(30歳)による不祥事。高校の遠足向けバス11台を手配し忘れたことに気づいたAは、遠足を中止させてミスを隠そうと、同校生徒を装って「遠足を中止しなければ私は消える」などと自殺をほのめかす手紙をでっちあげた。そして、遠足前日に同校を訪問し、「校舎の入口で拾った」と言ってその手紙を届けたが、結局、学校側は遠足を決行。当日になって、バスの手配ミスが明らかになった。

   このニュースに接した人は、誰もが耳を疑い、「なんてバカなことを」とあきれ返っただろう。Aの行動はあまりに短絡的かつ身勝手であり、多くの高校生の気持ちと勤務先の社会的信用を深く傷つけてしまった。Aは会社を懲戒解雇され、偽計業務妨害容疑で警察に逮捕された。自分が犯した罪の重さを痛感し、更生してもらいたい。

「真面目に仕事には取り組んでおりましたので…」

偽の手紙を…
偽の手紙を…

   一方で、旅行代理店にも組織として大いに反省すべき点があるのではないか。事件の原因をすべてA個人に押し付けてしまうと、問題の本質を見失う恐れがある。

   確かにAの行動は常軌を逸している。しかし、人間なら誰でも、大なり小なりうそをついたことがあるだろうし、追いつめられて突拍子もない行動をとってしまうこともあるだろう。謝罪会見において支店長が「(Aは)真面目に仕事には取り組んでおりましたので、期待はしていたものの、今回の件は残念です」と語っていることからも、Aが異常な性格の持ち主だったとは考えにくい。

   また、うっかりミスは人間に付き物であり、バスの手配という重要な事務処理は、上司などがダブルチェックするのが普通だ。Aに任せきりにしていたのであれば、支店長以下管理職全員の落ち度である。当然のことながら、管理責任も問われるだろう。

   そこで、旅行代理店としては、以下のような点に注目し、A本人はもちろん、支店長、直属の上司、同僚から事件の経緯を詳しくヒアリングすべきである。

・Aはなぜここまで思い詰めてしまったのか。
・バスの手配ミスに気づいた時点で、なぜすぐに上司に報告・相談できなかったのか。
・A以外の社員は、なぜ手配ミスに気づかなかったのか。
・支店内のコミュニケーションや人間関係の問題が背景になかったか。

   その上で、A個人レベルの問題と組織全体の問題を見極めないと、効果的な再発防止策を講じることはできない。

「不正をさせてしまった」責任

   個人の問題と組織の問題という視点は、あらゆる不祥事にあてはまる。例えば、先日NHKが放送したイギリスBBCの共同制作番組「Brakeless ブレーキなき社会 ~JR福知山線脱線事故9年~」の中で、最愛の家族を奪われたご遺族が語っていた言葉は、それを痛感させる。

「あの運転士が、あの曲線に、なぜあの速度で入ったのか。それを解明しない限り、JR西の会社としての安全問題は、なかなか見通せない」
「事故を起こした運転士は、ぼくは、事故当時は『こいつ!』と思うとったんやけど、よくよく考えると、半分はこいつのせいやけど、半分はこいつも被害者。ホント、先が明るく、これからJRという会社で一生懸命やっていこうとしてた青年なんですよね」

   電車の運転と旅行代理店の営業とでは仕事の内容が全く違うし、筆者は両社の内情を詳しく知る立場にはない。しかし、運転ミス(オーバーラン)による遅れを取り戻そうと異常なスピードでカーブに突っ込んだJR西日本の運転士(故人)と、バスの手配ミスを隠そうと自殺をほのめかす手紙をでっち上げた旅行代理店社員の心理には、あらゆる組織が教訓とすべき何らかの共通点が見いだせるのではないだろうか。

   いかなる理由があろうとも、不正を犯した本人が一番悪い。しかし同時に、会社(上司)は、従業員(部下)に「不正をさせてしまった」責任を重く受け止め、マネジメントのあり方を問い直さなければならない。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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