2024年 4月 26日 (金)

アメリカでの「和食ブランディング戦略」 日本人以外経営の「エセ和食」も活用できる?

「エセ和食」改め「フュージョン和食」を日本食体験の入口に

   果たして、「エセ和食レストラン」は好ましくない存在なのでしょうか?個人的に足繁く通いたくはなりませんが、「アメリカにおける日本食ブーム」にこうした「エセ和食レストラン」が貢献していることは間違いないと思います。もちろん救いようがないほど和食からかけ離れた店もありますが、成功しているレストランは「和食=ヘルシーでスタイリッシュ」というイメージを盛り付けや内装を含めてうまく打ち出して、プレミアムな値段を正当化していると感じます。「日本人の舌」は100%は満足させられないけれど、少なくともそれ以外の国の人たちに「日本食を食べている」という満足感は提供できている。さらに言えばアメリカ人の舌がすでにこうした店の味に慣れてしまっている。

   そもそも料理のローカライズは普通に起きることです。例えば全米に展開する中華料理のファミレスチェーンは中国人も首を傾げる味。北米の中華料理屋で食後に出される「フォーチュンクッキー(おみくじの入ったクッキー)」も、中国人からしたら謎の習慣です。さらに言えば最近は日本から「逆輸出」までされているラーメンは元々中国のものをローカライズしているし、インドからのカレーライスだって同じ。2006年ごろ「寿司ポリス」が批判を浴びたのは、こうした文化的背景を無視したからでしょう。

   そして、アメリカ人も「オーセンティック和食」が理解できないかと言うとそうではない。オバマ大統領が安倍首相と訪れた「すきやばし次郎」は2012年に「Jiro Dreams of Sushi」という映画がアメリカで公開されたこともあり、最も有名な日本のレストランのひとつですし、日本と遜色ないラーメンを食べようとしたら最低10ドル(=約1000円)、店によってはトッピングやチップを加えたら20ドル(=約2000円)超えなんていうこともありますが、行列ができています。

   日本食体験の「入り口」として「エセ和食」があって、その先に日本発の「オーセンティック和食」や日本での「和食ツアー」がある。共通した提供価値は「ヘルシーでスタイリッシュ」。そんなブランディング戦略があってもいいのではないでしょうか。あっ、「エセ和食」という言い方がまず良くないですね。「フュージョン和食」「和食リスペクトレストラン」に変えてもいいかも知れないですね。(室健)

室 健(むろ・たけし)
1978年生まれ。東京大学工学部建築学科卒、同大学院修了。2003年博報堂入社。プランナーとして自動車、電機、ヘルスケア業界のPR、マーケティング、ブランディングの戦略立案を行う。現在は「日本企業のグローバル・マーケティングの変革」「日本のクリエイティビティの世界展開」をテーマに米ミシガン大学MBAプログラムに社費留学中(2014年5月卒業予定)。主な実績としてカンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバルPR部門シルバー、日本広告業協会懸賞論文入選など。
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