「決断できない」経営者の末路 「利用されるだけ利用されておしまい」

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   弊社は、クライアント企業との共同事業形式での新規事業コンサルティングも手掛けています。1年以上前からクライントT社と取り組んできた大がかりな海外への商材販売のビジネスが、現在も動いています。T社社長は二代目の新米社長。新規ビジネススキームの具体像が描けないということと、親密先以外とのトップ営業経験が乏しいということから、弊社との共同事業形式でのコンサルティングを申し出てきたものです。しかしこの事業、半年ほど前に具体化直前まで行きながら、なぜか停滞してしまっているのです。

   これまで弊社は主にビジネススキームの構築を担当し、対外折衝は新米社長が営業経験を実地に積む機会でもあったので、私の指示の下でT社社長に担当してもらってきました。彼の話では、海外向け販売取りまとめ役の国内商社K社と昨年末までに販売スキームがほぼまとまっていたのに、突如様相が変わったのだと。K社にこれとは関係のないおいしい話が降って湧いたようで、K社社長はそちらに気を奪われて我々とのビジネスを積極的に進める意欲が鈍った様子。ここ1、2か月は進展を促しても、「様子を見ながら徐々に」などとお茶を濁す回答ばかりで、ラチが空かないのだと言います。

相手はノラリクラリと…

決断の時が迫る…
決断の時が迫る…

   当方サイドはここに至るまでそれなりの先行投資をし、K社の市場調査について費用負担するなどの支援もしてきました。例えK社に他からいかなる後発の話が出てこようとも、その話と並行で取り組むならまだしも、先発しているこちらの話を黙って棚上げして後発話を優先するというのは信義則違反であることは間違いありません。T社社長も先方の態度には納得し難いものを感じてはいるのですが、この先どう対処すべきか考えあぐねている様子でした。

   私はT社社長に、K社宛次の3つの条件を突きつけるように指示しました。

(1)こちらがある程度の先行投資をするかわりに、K社は早期のビジネス化に向け最大限の努力をするという、当初の約束事の再確認
(2)ビジネススキーム動き出しに関する具体的期日の確定
(3)上記(1)、(2)いずれかに同意出来ない場合、本ビジネスの白紙撤回宣言

   これを受けてT社社長は、(1)(2)をK社社長に求めました。結果は、(1)は「もちろん了解している」との回答を得られたものの、(2)については「少し待って欲しい」と例によってノラリクラリかわされたと。さらに「大関さんのところにお詫びかたがたご説明にうかがいたい」との話になって、(3)の提示には至らなかったと報告がありました。

   折衝の甘いT社社長のことですから、ある程度予想された折衝結果ではありましたが、私はこの対応を聞いて、T社社長もK社社長も同じタイプの経営者ではないかと感じました。進むかやめるか、「決断」できないタイプの経営者。私の目にはそう映ったのです。

   K社社長は別のおいしそうな話が出てきたので、こちらの話も手放したくはないものの、先に進ませる「決断」が鈍っている。一方のT社社長は、本人いわく「強気に出てしまうとK社と完全に切れてしまい、これまでの投資が無駄になるのではないかという懸念」から、最後通告となる(3)の言い渡しの「決断」が鈍っているわけなのです。

「決断せず」「様子見」は、前進ではなく停滞、あるいは後退

   こんな結論が先延ばしになりそうな場面では強引にでも事をすすめないと、結果はどうあれいつまでも結論に辿りつかず、ダラダラ無駄な時間ばかり使うことになるだろう、と私は思いました。そこで、我々はK社社長の訪問を断り、逆にK社に乗り込むことにしました。

「我々と一緒にビジネスをやる気があるのなら、3日以内に動き出しの期限を具体的に決めてください。その回答がいただけないなら、この話はなかったことにしましょう。我々はもうこれ以上待てないので、他社さんとやります」

   K社に乗り込んだのは、我々は待ち受け姿勢ではないというこちらの姿勢を態度で示すためです。K社社長はかなり面喰った表情でしたが、「分かりました」とだけ答えました。

   経営者の最も重要な仕事のひとつは「決断」です。「決断」せず、「様子見」を理由にして流れに身を委ねているのは前進ではなく停滞、あるいは後退です。「決断」結果が前進であれ撤退であれ、「決断」のないところに成果はあり得ないのです。そして最悪のケースでは、決断力がないと折衝相手に悟られるなら、それをいいことに利用されるだけ利用されておしまい、ということだってあるのです。

   3日後にT社社長宛に来たK社からの回答は「今調整をしているので、あと1週間回答を待ってくれ」でした。T社社長は、「これ以上は待てません」と回答したと私に報告がありました。本事業は当初予定よりも遠回りになるかもしれませんが、新米経営者のT社社長が経営者としての折衝のあり方を学べたと言う意味では、大いに価値があったと思っています。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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