高度成長期を駆け抜けた中小企業 そのイノベーション・新事業開拓に注目

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   中堅・中小企業は、時代の変化に対応したニュービジネスが注目され、メディアにも取り上げられやすい。しかし、収益の安定性や雇用の維持の面からは、昭和30年代、40年代に設立し、高度成長期を駆け抜けた企業を見逃すことはできない。

   従業員200人前後で、工場を持ち、ニッチ市場と言われるような分野でトップシェアを維持する。そんなイメージの中小企業だ。このような企業は、イノベーション(技術革新)や新事業開拓で生き抜き、それがメディアに取り上げられている。

建材、梱包材の両分野で一貫生産体制を構築

   東京都葛飾区に本社を置く高橋木箱製作所は1958年の設立。全国各地にある大企業の生産ラインにおいて製品の梱包を請け負っているほか、ツーバイフォー住宅パネルの生産、梱包設計システムで培ったソフトウエア開発を行っている。同社は今年(2014年)、建材、梱包材の両分野で一貫生産体制を構築した。建材では、ツーバイフォー住宅パネルを生産する鹿嶋事業所(茨城県鹿嶋市)を稼働した。茨城県内の既存工場から生産を移管したうえ、新たに合板加工機2機を追加し、月産1万平方メートル体制を整えた(日刊工業新聞が2014年3月18日付で掲載)。機械化と自動化を推進することで、生産性と品質の向上を図る戦略だ。

   また梱包材では、輸入木材の価格が上昇していることを受け、同社初の製材工場を北海道日高町に設置した。自社保有の山林や地元業者から原木を調達し、自社の情報システムとリンクさせた各種サイズの最適造材により端材の発生を少なくする(同26日付)。嶋田貫一社長は「自社の原料比率を高めることで、競争力を高める」と話す。同社の創業者である嶋田社長は、80歳を超えてなお現役。人望が厚く、社内外に数多くの嶋田ファンがいる。加えて、この事業意欲。最終製品ではないので派手さはなく、特段の広報活動も行っていないものの、トップの人柄とあいまってメディアがフォローしている。

派手さはないものの、産業を下支えし、社会に貢献

   もう1社は、東京都千代田区の秋葉原に本社を置く水谷電機工業。同社は1967年の設立で、電子機器や産業機械に使われている半導体を安定稼働させるための放熱器「ヒートシンク」の専業トップメーカーだ。1996年にはマレーシアに工場を設立。創業者である水谷和夫氏の子息の水谷典央氏がマレーシア工場の責任者として海外市場を開拓した後、帰国し、現在は和夫会長、典央社長の体制となっている。同社がいま、力を入れているのが、自動振動方式の産業用ヒートシンク「ヒートレーン」。大容量の熱移動が可能で、設置姿勢による制約も受けないことから、インバーター、サーボ、レーザーなどの産業機器の制御装置向けに新たな需要が見込まれる。従来のヒートパイプ方式に比べ、熱の伝わりにくさを示す熱抵抗値が30%~40%改善しており、日刊工業新聞が2012年7月5日付で掲載した。

   このヒートレーンはこれまでマーケティングに時間をかけ、本格的な生産体制の構築を見送ってきたが、2014年春に静岡県の沼津工場で生産体制を構築、いよいよ本格的に営業展開するという。同社では、「レーザー装置のように発熱密度の高い製品の放熱に有利」としており、医療機器やロボットの技術革新を陰で支えるとみられる。水谷電機工業も高橋木箱製作所と同様、最終製品ではないため派手さはないものの、産業を下支えし、社会に貢献している。両社の記事は日刊工業新聞が掲載しているが、日刊工業新聞はこのような中小製造業に強みを持つメディアだ。(管野吉信)

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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