アスベスト処理で開発進む独自技術 「排出量ピーク」は乗り切れるか

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   首都圏アスベスト集団訴訟問題で、 今年(2014年)5月に新たな動きがあった。第2陣の原告(建設労働者と遺族)52人が15日、総額17億3250万円の損害賠償を求める訴えを横浜地裁に起こした。読売新聞の地方版などが報じている。

   環境省は2006年に、建築物の解体によるアスベストの排出量が2020年から2040年ごろにピークを迎えると予測している。年100万トン前後のアスベストが排出されると見込まれているだけに、有効な処理方法を開発できればメディアが掲載・報道する可能性は大きい。

大掛かりな装置を必要としない「処理液」

   アスベスト処理で近い将来、注目を集めそうなのは、サンテク(横浜市神奈川区)。アスベストの針状結晶はケイ素、マグネシウム、鉄の化学構成となっており、このブリッジをリン酸で欠落させることにより、針状結晶が塊となり、石英等に変わることを証明し、アスベスト処理液を開発した。この処理液は、財団法人化学物質評価研究機構、帝人エコ・サイエンスの試験でその有効性が確認されており、日米両国で特許を取得、近く豪州でも特許を取得できる見通しだという。

   現在は、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターに詳細な資料を提出する段階で、学識専門家らによる評価や実証試験を経て、日本でも使われるようになるとみられる。処理液は、大掛かりな装置を必要としないだけに、コストパフォーマンスが高く、国が認可すれば一気に需要が拡大しそうだ。ただ、いまのところサンテクは専門家らによる評価を前に、メディアに露出することを控えており、目立ったメディア掲載実績がない。いずれ、メディアを賑わす企業としてウオッチしておきたい。

焼却灰を1450度から1800度の高温で溶融

   一方、日本環境保全(茨城県牛久市)は茨城大学工学部、茨城県工業技術センターと共同で、焼却灰の小型高温溶融炉(日本、台湾、韓国で特許取得済み)を開発し、アスベストの無害化に成功している。この溶融炉はA重油に還元水を混合し、特殊バーナーで油の中に微細な水粒子を混合させるエマルジョン燃焼方式により、焼却灰を1450度から1800度の高温で溶融することに成功した。アスベストだけでなく、ダイオキシン等の有害物質の発生も抑制し、溶融によるスラグ(鉱滓)化で無公害化処理を行う。

   燃料はA重油だけでなく、廃油や再生油を使うことができるのでランニングコストが安くて済み、溶融後のスラグはリサイクルが可能という優れもの。現在はセシウムなど放射性物質の処理にも力を入れており、昨年(2013年)1月から2月にかけて福島県本宮市で神戸製鋼所とともに溶融実証試験を行った。日本環境保全の小型高温溶融炉は、1998年から1999年にかけて1年間行った実用化実証試験をはじめ、多くのメディアが取り上げている。ただ、廃棄物処理プラントは平成の大合併で大型化が進んだうえ、設備老朽化を受けて新しいプラントを導入するため、日本国内では導入事例が少ない。国内よりも早く、2001年に台湾高雄市に設置された。アスベスト、セシウム処理を追い風に、日本国内での設置に弾みをつけたいところだ。(管野吉信)

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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