「取材への広報対応」、さっぱりダメだった朝日新聞 「原発・慰安婦」会見を分析する

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   メディア対応の極意は「逃げない、隠さない、ウソつかない」。会社をダメにするトップは「逃げる、隠す、ウソつく、なすりつける」。また、企業不祥事が発生した時のリスクマネジメントは「事実確認・原因究明、対応策、再発防止策」を速やかに明らかにし、実行することが肝要で、「情報の小出しは禁物」と、この連載で折に触れて解説してきた。

   さて、普段は「会社不祥事」を取材する側の朝日新聞社が先日、謝罪会見を開いた。数々の企業取材を通じて、これらの「極意」を知り尽くしているはずの同社だが、その一連の対応は、お手本どころかむしろ、お粗末だったとしか言いようがない内容だった。

「情報を小出し」の悪いパターンの典型例

   同社の木村伊量(ただかず)社長が記者会見を開いたのは、2014年9月11日夜。案件は、「所長命令に違反 原発撤退」と吉田調書内容を特報した(5月20日付)記事の取り消しや、一連の慰安婦報道における「吉田(清治氏)証言」記事取り消し(8月5日付検証記事中で)が、「遅きに失した」ことへのお詫びなどだった。

   企業防衛上の観点から、時間が経過してしまった不祥事については、すべてをセットにして発表し、事態を長引かせないことが鉄則といえる。今回の朝日新聞のケースから、企業が「他山の石」として学べることは、「情報を小出しにしない」ことの大切さである。訂正とお詫びが後ずれすればするほど、その内容が腰の引けたものであればあるほど「逃げる、隠す、ウソつく」の印象を濃くしてしまう。時間は十分にあったのだから、「事実確認・原因究明、対応策、再発防止策」と、責任の所在の明確化をセットにして一気に訂正とお詫びをすれば、これほどまでに信用を毀損することはなかっただろう。もちろん、これは多くの企業にも当てはまる。

   慰安婦報道関連では、8月5日の検証記事の段階で、今回の会見で公表したお詫びや経緯説明などを行っておけば、ここまで事態は深刻化しなかったのではないか。また、一旦は不掲載となった池上彰氏コラム(8月29日付を予定)が、9月4日付で「慰安婦報道検証 訂正、遅きに失したのでは」との見出しで載ったが、掲載見合わせの詳しい説明をしなかったため批判を招き、9月6日付でようやく「読者の皆様におわびし、説明します」と題する記事を掲載した。「情報を小出し」の悪いパターンの典型例だ。

トップはくれぐれも「逃げる、隠す、ウソつく、なすりつける」と言われないように

   「事実確認」の重要さも浮き彫りになった。原発報道関連では、朝日報道への批判・誤報指摘は、8月半ばから産経新聞など各紙が展開していたし、そもそも5月の掲載直後から週刊誌が疑問の声を挙げていた。にもかかわらず、朝日新聞は事実確認をおざなりにして、週刊誌に抗議文を送りつけるなどしていた。早い段階で事実確認を徹底していれば、こんな対応にはならなかったはずだ。一般企業の場合、自社商品の欠陥が指摘されたら、すぐに事実確認を行い、事実であれば公表と対応に乗り出すだろう。お客様(読者)の信用を得ることを第一義に考えなければならない。

   不祥事については、明るみに出ることを恐れる企業心理がどうしても働いてしまう。そこで大切なことは、「疑わしきは事実確認をせよ」ということである。事実確認の結果、リスクが顕在化したら、原因究明と対応策を抱えて副社長、専務、常務クラスがお詫び会見を行う(死亡事案の場合は最初からトップ)。その後に対応策の進捗具合、再発防止策と責任の明確化を抱えてトップが会見するのが一般的である。トップはくれぐれも「逃げる、隠す、ウソつく、なすりつける」と言われないようにしてほしい。朝日新聞のケースでは、担当役員を降格させ、トップの進退を明言していないことが「なすりつけ」と受け取られ、企業イメージを悪化させている。(管野吉信)

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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