「ストーカー」は15年ほど前から社会問題になっていた。当初は、「ごく一部の特殊な人」という印象だったが、ネットが普及した今の時代は、悪意のある人物にとって、簡単にだれかに嫌がらせができてしまうようになってしまった。そんなおそろしい現実を、逆手に取った(?)キャンペーンが展開された。ベルギーのテレビ局「VIER」は、同局が国内放映を開始した米CBSの番組「Stalker(ストーカー)」のプロモーションの一環として、ビジネス系SNSの「LinkdIn(リンクトイン)」を利用した。この番組は、視聴者にストーカーの恐ろしさを思い起こさせる啓発番組である。あなたのページに不気味な「足あと」が・・・この「足あと」は焦る、かも同局は、リンクトイン上に「Stalker」という名前のユーザーアカウントを作成。プロフィール欄に「Iknowwhereyoulive.(あなたがどこに住んでいるか、私は知っています)」などの詳細を記入。そのあと、他のリンクトインユーザーのページを訪問した。リンクトインでは、自分のページをだれかが訪問すると、サイト上で通知が表示される仕組みになっている。Stalkerにページを閲覧されたユーザーのページには、このような通知が届いた。「Stalker(Self-employedataplacenearyou)viewedyourprofile.」(あなたの近くで自営業を営むStalkerがあなたのプロフィールを閲覧しました)これで何事かと驚いたユーザーのうち、63%がStalkerのページを訪れた。そしてユーザーたちは訪れたページではからずも、テレビ番組の詳細や、それまで未公開だった本編映像の一部を視聴することになる。「そういうことだったのか」と安堵すると同時に、番組の存在を知ることになるわけだ。裏を返せば、37%のユーザーは無視して、もしくは気味が悪いあまり、Stalkerのページを訪れなかったということになる。リンクトインの事務局にクレームを入れた人も結構いたのか、キャンペーンを開始した次の日には、事務局によってStalkerのアカウントが削除された。これで騒動は終わり・・・かと思いきや、テレビ局は、新たに複数のStalkerアカウントを作成し、ストーキングを再開。合計で1万2000人のユーザーのページを訪問。さらに、この話題がツイッターにも派生し、約2万7000人がツイッター上で番組に関するつぶやきを目にしたという。キャンペーンは昨(2014年)秋に展開された。仕掛けられたユーザーの反応は、キャンペーンの巧妙さを評価するものが多かったのだが、おそらく気味悪く、もしくは後味悪く感じたひともいたのでは?たしかに、ストーカーの不気味さは伝わったようだが・・・。(岡徳之)
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