社長以外は「全員ヒラ社員へ移行」! 「メディアに載る」経営ネタの売り込み方

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   ある中小企業が米国企業の製品を輸入販売することになり、ニュースリリース作成のため専務と会った。一通り取材を終えた後の雑談で、専務は「今度、中小の建設会社を買収する」と打ち明けた。私が「それ、メディアに売り込めますよ」と言うと、専務は「えっ!?でも10人くらいの会社ですよ」と半信半疑の様子。さらに聞くと、「利益は出ているけど、後継者がいなくて手放すらしい」と建設会社の内情を話してくれた。後継者難で事業承継ができない中小企業は非常に多く、社会の関心も高い。実は、このような経営ネタがメディアに取り上げられやすいのである。

新製品・新サービスより「歓迎される」

   中堅・中小企業の広報活動は圧倒的に新製品、新技術、新サービスであり、事業拡大に直接結びつく話題をメディアに取り上げてほしいと願っている。それはそれで「あり」なのだが、メディアに取り上げられる確率は低くなる。メディアは毎日、数多く寄せられる新製品、新技術、新サービスの中から「社会的にインパクトの高いもの」を選んで、限られた紙面、報道枠の中で取り上げるわけだから、競争率が激しい。そこで考えてほしいのが経営ネタだ。中小企業同士が手を組んで事業拡大や地域振興を目指す、事業承継が困難な中小企業の経営権を取得する、工場を再編する、行政や地域団体とともに人材獲得に乗り出す――。こうした経営ネタは、社会の現状を映したり、新たな雇用につながったりするので、メディアに取り上げられやすい。記者心理としても、『宣伝臭さ』がある新製品、新技術、新サービスより歓迎される。ニュースの要素は「社会性」と「ヨソにない特徴」だから、新製品、新技術、新サービスにこだわっていると、メディアに取り上げられる可能性を自ら狭めてしまう。

時間が経っても掲載される可能性がある

   例えば、人材育成・教育会社のIPイノベーションズ(東京都千代田区)は2014年7月に、部署・役職を全廃し、社長のほかは全員ヒラ社員という完全フラット型組織に移行した。技術の進歩や経済状況の変化が速い時代に、より柔軟に素早く対応できる組織を目指し、顧客満足度の向上と売り上げの増加を図るのが狙いだ。部長など役職の肩書はなくなるが、当面給与は変わらず、新たに社員同士を含む360度評価を行い、週1回の全社会議で全社の動きを把握するという。この話は従業員の数によって、ニュースバリューが異なってくる。社員が300人もいて同じことをしたら、「本当に運営できるのか」という疑問とともに、メディアが取り上げただろう。同社の社員数は28人。このため、ストレートニュースにはならなかった。ところが、2014年11月13日付のフジサンケイビジネスアイで同社の浦山昌志社長のインタビュー記事が取り上げられ、浦山社長は組織変更を軸に会社の取り組みついて語った。新製品、新技術、新サービスには旬があり、時間が経てば経つほどニュースバリューはなくなってしまう。一方、経営ネタは記者の記憶に残れば、このように記事になる。

   グローバル化が進み中で、海外進出話も記事になりやすいテーマだ。A・M・S(東京都千代田区)は、日本の医薬品・医療施設をミャンマーに輸出するため、現地会社と折半出資で医薬品の承認・申請・販売業務などを代行する合弁会社を立ち上げた。この記事は日経産業新聞が2014年5月9日付で取り上げた。新製品、新技術、新サービスを打ち出しにくい会社でも、経営ネタは出せる。経営トップの広報マインドを磨けば、メディア掲載のチャンスは広がる。(管野吉信)

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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