2024年 4月 20日 (土)

もう「解雇規制緩和」の議論はやめよう 総合的な変化踏まえ「再定義」を

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解決策のひとつは、「正社員、非正規社員という区別をなくす」

   では、どんなルール作りと法整備が考えられるか?

   解決策のひとつは、「正社員、非正規社員という区別をなくす」ことだ。

   働く人は、全員が「有期雇用の契約社員」。契約期間は2年くらいとして、基本的には雇用継続するのだが、能力や成果の期待に沿えなかった場合は自由に契約を解除することができるようにする。能力のある人はもちろん解雇の心配はなく、成果が出せない人や努力しない人が淘汰されていく仕組みだ。

   もちろん、雇用継続の条件は企業によって自由に設定できるから、「ウチは短期の成果は求めない。長期的に評価するよ」という企業があれば、短期的な評価では成果を出せないが、長期的に努力できる人が報われる、といった形で相互補完できることだろう。

   一方で受け入れる企業側も、「契約期間が短いから能力不足」といった判断をするのではなく、相性や社風が合わないといったこともあるので、期間だけで判断しないようにするという社会的合意が必要だ。また賃金は、働く人に合わせて柔軟に対応できるようにしておくのがよい。

   二つ目は、「解雇の金銭補償制度」を設けること。現在の日本では法律で認められておらず、厚生労働省側も当面は認めない姿勢だが、一つ目よりは実現可能性が高い。

   これは文字通り、従業員に金銭を支払うことを条件に解雇する、という契約である。法律でがちがちに縛られるよりも、労働社会の実態をふまえれば、こちらのほうが現実的だ。

   例えば解雇が裁判となり、判決で「解雇無効」となったとしよう。その場合は「会社に戻って仕事を続ける」ということになるのだが、それも気まずいだろうし、お互い信頼関係も残っていないはずだ。そこで金銭補償の基準が設定されていれば、納得ある解決ができる可能性もあろう。

   同基準が明確になることは、大企業の社員のみならず、不当な解雇リスクにさらされている中小零細企業の社員にとってもサポートになり得る。

   雇用が流動化し、成熟産業から成長産業へ労働力が柔軟にシフトできれば、経済成長も加速することが期待できる。また、個々人が自身のライフスタイルに合った働き方ができる社会が実現するのであれば、誰も文句はないはずだ。

   しかし、個別具体的な法律改正をみていくと、誰かが改革の痛みを負担することになる。改革には誰もが賛成だが、その痛みを被るのが自分というのはイヤ、という構図なのだ。その点推進派も反対派も、お互い現実的な状況改善に向けた議論を進めていきたいものである。

   これだけ多様な人が働いている中では、雇用のありかたについても様々な意見が出てくることは当然である。今後は雇用条件、解雇要件の明確化を進め、労使ともに納得いく形を創り上げていくことが求められる。(新田龍)

新田 龍(にった・りょう)
ブラック企業アナリスト。早稲田大学卒業後、ブラック企業ランキングワースト企業で事業企画、営業管理、人事採用を歴任。現在はコンサルティング会社を経営。大企業のブラックな実態を告発し、メディアで労働・就職問題を語る。その他、高校や大学でキャリア教育の教鞭を執り、企業や官公庁における講演、研修、人材育成を通して、地道に働くひとが報われる社会を創っているところ。「人生を無駄にしない会社の選び方」(日本実業出版社)など著書多数。ブログ「ドラゴンの抽斗」。ツイッター@nittaryo
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