細々と口うるさい経営者 これじゃあ管理者が育たないわけだ

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   オーナー創業者が社長を務める中小OA機器関連のA社。ワンマン経営故か管理者が育たないとの相談を受けて、1年ほど前から社内管理者教育を依頼されお付き合いを始めました。現場ヒアリングを経てM社長と基本方針を決め、研修プログラムがスタートしました。

   第1弾の研修プログラムは、30代後半で人事部門を統括しているT総務部長と研修対象の現場管理者を預かるK部長との社長もまじえた相談で日程がスムーズに決まり、予定通りに無事終了。第2弾以降は、社長の手を離れT部長を窓口にスケジュールを決めて順次実施をしていく予定でした。

研修依頼されたが、先方から「なしのつぶて」に

こうして、ああしてこうしてだな、そうして、こうして・・・
こうして、ああしてこうしてだな、そうして、こうして・・・

   ところが、こちらからいくら催促しようとも一向に次の日程が出てきません。頻繁に催促しつつ、待つこと2か月。このままではラチが開かないと、やむなくM社長に相談することにしました。

   社長からは、「Tはどうも時々ルーズなところがありましてね。本人にはよく言っておきます」との回答。私がこのままでは研修がすすまないと直訴すると、「では、Kをフロントに立てて進めてください。年齢はTと同じだけれども、Kの方が営業現場の責任者なので何につけても動きがいいハズです」と、窓口を代えて仕切り直しと相成りました。

   K部長は社長からの連絡を受けすぐに日程調整にとりかかってくれ、3日後にはその先3か月分の日程が固まり研修は無事再開しました。2か月後、さらにその先3か月分の日程調整お願いしたところ、事態は急変します。K部長が前回のT部長と同じように、こちらの連絡に対してなしのつぶてに。何度問い合わせをしようとも、メールは放置、電話には出ないなど全く動かなくなってしまいました。

   時期を同じくして同じようなことが、人を介して最近お付き合いをはじめたIT系企業C社でもありました。

   昨秋、とっかかりでお目にかかった管理部門責任者の取締役D氏へのヒアリングでは、「急成長故にとにかく業務の錯綜状況がひどく、管理部門が回っていかない。仕事がどれも属人的になっており現状でもパンク気味で、これ以上業務が増えれば確実にお手上げです」との悲鳴にも近い声が聞かれました。業務プロセスの見える化、マニュアル化により交通整理とナレッジ・マネジメントを至急進めるべきとの提案をし、D氏が社長の了解を得次第、社長を交えたミーティングを経て年内にスタートする話になりました。

   しかし、待てど暮らせどD取締役からは何の連絡もなし。それどころか、こちらから入れた確認のメールにも返信はありません。電話にいたっては「居留守」ではないかと思われるほど「不在」の連続で、結局年内には連絡ひとつ取れずじまいでした。

「社長から直接口頭で指示が出ているか否か」が判断基準に

   同じような事態が2件も続くと、私自身の接し方に問題があるのではないかと考えてしまいます。そこで先のM社長に、K部長がT部長と同じように動かなくなってしまった話をして、何か理由が思い当たらないかを聞いてみることにしました。社長は驚いて、理由は全く分からず腑に落ちないと、直接社長自身がK部長に聞いてみることになりました。

   何日かして社長から連絡がありました。

「Kは優先順位の問題だと言うんだよ。要するに研修対応が後回しになった理由は、『重要度大&緊急度小』の案件が『重要度小&緊急度大』の研修に次々優先した結果だとね」

   確かに、重要度と緊急度の4分割マトリクスで優先順位をはかった場合、K部長の判断は正しいと言えます。しかし問題は、社長命令により『重要度大&緊急度大』で優先度高く取り組んだはずの研修が、いつの間にどんな理由で『重要度小&緊急度大』になり下がり優先度が低くなってしまったのかです。社長はこの不思議の理由も説明してくれました。

「よくよく聞けばうちの管理職にとって業務の重要度を計る基準は、社長から直接口頭で指示が出ているか否かだったのです。そりゃなんだとTにも同じ質問をしてみると、答えは同じでした。完全に私の責任です。要するに私があれこれ口うるさく指示を出しすぎるから、管理者は重要度の判断を私の指示のあるなしではかっていたのです。研修は動き出したからと安心していたら、私が口にしなくなったことで重要度が下がったと判断して後回しになっていたのです。本当に申し訳ない。これじゃ管理者が育たないわけです」

   もう一社のC社も紹介者に聞けば、社長は40代前半で何でも一人で決め会社を大きくしてきた超ワンマンのカリスマ創業者だとか。管理部門の取締役と言えども、A社と同じように優先順位の判断を、社長の指示あるなしで判断していたのは想像に難くないところです。

   思い起こしてみると、この2社に限らずワンマンオーナー企業では、管理者のトップへの判断依存がその成長を阻んでいるケースが実に多いのです。A社での次回以降の研修は、「判断業務のあり方」を課題の中心に据え管理者方の根本の姿勢を正すことにしましたが、長年身についた習慣を変えるには、社長自身の姿勢変更も含めかなり時間がかかりそうです。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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