2024年 3月 29日 (金)

日経の企業報道スタンスが変わった 「ストーリー性のあるニュース」重視

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   日本経済新聞社が企業報道のスタンスを変えつつあるのをご存じだろうか。2014年春に産業部と消費産業部を統合して企業報道部を発足させ、縦割り組織を改めた成果が紙面に表れている。その変化とは「ストーリー性のあるニュース」の提供だ。ビジネスの現場における挑戦、葛藤、解決、そこから生まれる感動を伝えている。

   新聞のニュースといえば、「社会性」「ヨソにない特徴」が掲載の尺度になっているが、一般のニュースはすぐにインターネット上を駆け巡る。「ストーリー性のあるニュース」は、発行部数を漸減させている新聞の挑戦、葛藤、解決でもある。これに合わせて、中堅・中小企業広報もまた「ストーリー性」が求められるようになるだろう。裏返せば、「ストーリー性」が提供できれば、新聞に掲載される確率がアップする。

業界の常識を打ち破る

   今年(2015年)2月、日経産業新聞で連載シリーズ「異端力」第2部が始まった。初回は産業廃棄物処理業者である石坂産業(埼玉県三芳町)の石坂典子社長(42歳、紙面掲載時、以下同)。1999年、所沢産野菜からダイオキシンが検出されたという一部報道を引き金に、産廃業者への反対運動がエスカレートした。「町から出ていけ」。石坂産業も周囲を取り囲まれた。「世の中に欠かせない仕事なのに...」。悔しさをにじませる父の姿に「私が社長をやるよ」と訴えた。「脱・産廃屋」。自己否定とも取れるスローガンを掲げた。存在意義を理解してもらうには、業界の常識を打ち破る必要があった。

   まず手をつけたのが社風の改革。たばこの煙がこもる休憩所は、勤務中でもたまり場になっていた。石坂社長は恐る恐るドアを開け、声を張り上げた。「何やってんの。働きなさいよっ」。「迷惑産業のイメージを変えたかった」という石坂社長は挫折を乗り越え、会社の危機を救った。石坂産業のリサイクル率は95%と業界で突出し、小学生から企業まで毎月500人が見学に訪れる。石坂社長は「所沢のジャンヌ・ダルク」と呼ばれる。

   「異端力」では、お好み焼きの全国チェーンである千房(大阪市)の中井政嗣社長(69歳)も取り上げられた。2009年から元受刑者の雇用を始めた。再犯を防ぎ、社会復帰を支援するには働く場が必要だと考えたからだ。刑務所に求人を出し、自ら面接する。これまでに21人を採用し、4人が今も千房で働く。失踪した者も何人かいるが、多くは働くことに自信を得て、別の企業に転職した。中井社長の決め言葉は「できるやんか!」。「過去は変えられないけど、現在と未来は変えられる」と説く中井社長は、社会からはじき出された人たちを受け入れることで、会社全体に活気を吹き込んでいる。

管野 吉信(かんの・よしのぶ)
1959年生まれ。日刊工業新聞社に記者、編集局デスク・部長として25年間勤務。経済産業省の中小企業政策審議会臨時委員などを務める。東証マザーズ上場のジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)の広報室長を経て、2012年に「中堅・中小企業の隠れたニュースを世に出す」を理念に、株式会社広報ブレーンを設立。
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