採用時に「同業他社には転職しちゃダメ!」 どこまで要求できるのか

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   企業にとって、元社員が転職先に、顧客情報などの「機密情報」を持ち出すリスクは、かなり大きい。今(2015)年3月には、東芝の提携先メーカーの元技術者が、東芝の研究データを不正に持ち出し、転職先の韓国企業に流出させたとして、懲役5年罰金300万円の一審判決を受けた(被告側は、即日控訴)。

   そこまで大きな事件にはならなくても、「自社の営業ノウハウを、外部に持ちだされたら・・・」と、不安になる人事担当者は、結構いるようだ。

「転職制限、どこまでかけていいの?」

転職先、まさか同業じゃないよね?
転職先、まさか同業じゃないよね?

   Q&Aサービス「人力検索はてな」には、「新入社員の募集時に同業他社への転職制限を課すことについて」という質問が寄せられていた(2015年4月19 日)。投稿者は、現在、「業務拡充のために、営業社員の募集を考えている」が、「他社に漏れるとまずいノウハウも多く、どうしたもんかと悩んでいる」。できれば、転職の際の「制限」を、あらかじめ取り交わしておきたいが、「どこまでが妥当なのかが、いまいちよく分からない」という。「基本的には職業選択の自由が優先されるとは聞きますが、合理性があれば制限も可、とも聞きます。その線引きが分からないのです」。

   ちなみに、投稿者の会社は「営業ノウハウが業績を大きく左右する業界」であり、転職の制限をかけたい主な対象は「営業マン」だそうだ。制限は「同業他社への転職」のみを考えており、期間は2~3年、転職先「NG」の企業は、県内のみを想定している。こうした条件の場合、「営業マンの転職としてはそれほど転職活動に影響がないように思えます」という投稿者だが、果たして「同業他社への転職制限」は、どこまで許されるのか。

   回答者からは、具体的なアドバイスが寄せられた。ある人は、「競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)」について解説。「競業避止義務」とは、会社法で禁止されている行為で、自分や第三者の利益のために、競業関係にある会社に就職したり、競業関係にある事業を行なったりすることを禁じるものだ。回答者によると、「競業避止義務」は、退職後の業務の内容や、労働者の従前の地位・職務内容などを判断材料に、「合理的な範囲内でのみ認められる」。悪質な競業行為が行われた場合は、労働契約上の根拠がなくても、義務違反が生じて、元の労働者に損害賠償責任が認められることもあるそうだ。

   ただ、回答者は、こうした「競業避止の特約によって、入社を忌避される可能性はあると思いますが・・・」と、釘を刺した。確かに、一見厳しそうな「競業避止義務」を提示されれば、入社をためらう人が増えるかもしれない。

「機密情報の取扱いを、きちんと教育すればいいのでは」

   別の回答者からは、「就業規則の有無のまえに、社員教育で『不正競争防止法における営業秘密の定義』を学びましょう」とのアドバイスが寄せられた。社員全員に、「不正競争防止法でいう『営業秘密』である情報の取り扱いを、きっちり社規で守る」ことを徹底させれば、転職後の秘密の漏洩については、「転職制限の社規がなかろうと、『前職場から不正競争防止法で訴えられるのだ』という意識が生まれるのではないか」という。前の会社で得た情報をむやみに漏らさない、という規律を守るムードがあれば、それでOKということだろうか。

   質問にはコメント欄が設けられており、こんな意見も。「統制を加えた分、新入社員も含めて、社員の給料を上げたらどうでしょうかね。そしたら、社員も出て行くことが減るでしょうから、他社に漏れたらまずいノウハウが漏れずに済むんじゃないですか?」なるほど、一理あるかもしれない。(KH)

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