就活生の「ごね得」 本当に得か、実は損か

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「世の中、言ったもの勝ち」

とよく言います。

   私は比較的言う方で、まあまあ得したことの方が多いかな、と。

   では、これが就活ではどうか、ということで、今回のテーマは「ごね得の是非」です。

事故で選考参加断念の学生を説教

そこを何とか
そこを何とか

   就活生でごね得を考える学生がどれだけいるか、と言えば、全体から言えば少数派。

   特に就職状況が悪かった時期は、萎縮してしまっている学生が多いせいか、ごね得どころか、粘らない学生が多かったです。

   たとえば、説明会の予約、参加。

   この仕事を始めてから10年以上、ナビなどでの予約ができなければ、ダメ元で電話すればいい、と就活生には伝えています。

   これは私の専売特許というわけでなく、就活カウンセラーや大学キャリアセンター職員などもよく話すところ。

   これ、勝率7割くらいで参加できますし、説明会参加から内定に至る学生の話もよく聞きます。

   という話をしても、10人のうち実行できるのは1人か2人。

   それどころか、こんな話も。

   福岡で就活相談にのっていたときのこと。ある学生が、説明会に参加できず、人生終わった、と泣き顔でした。

   予約して、当日、車で山道を移動していると、側溝にはまり、身動きが取れなくなってしまいました。山道で携帯電話は通話不能。どうにかJAFを呼んだときにはすでに説明会が終了していました。

「終わったところに連絡してもムダ。行きたい企業だったのに、これでこの企業は終わりですよね・・・」

   打ちひしがれた学生を、それは違うと、話したのは同席していた某社採用担当者です。

「説明会終了後でも、連絡したうえで日程振りかえを要望すれば、どうにかなったはず。連絡ないままだと、『無断欠席』となるけど、連絡すれば、そこはまともな人事なら配慮するよ?実際の仕事だって、似たようなトラブルが起こり得るわけだし」

   これを聞いた学生は、どうにかなると、思っていなかったのか、目を白黒させていました。

20日程もあるのに「何とかしてください」

   こうしたごね得どころか、委縮気味の学生の方がまだ多数派です。しかし、2016年採用では売り手市場に転じているせいか、ごね得を考える学生も増えてきました。

   たとえば、説明会後の選考日程。今年は多くの企業で選考日程を増やして、少しでも多くの学生が選考に参加できるようにしています。

   ところが・・・、

「どの選考日程にも参加できません。何とかならないでしょうか?」

   こう言って、どうにかしようとごね得を考える学生が増えてきました。

   これが、選考日程の少ない企業なら交渉の余地はあります。

   しかし、ある企業では、1次選考の日程を20回も用意していたのですが、それでも「何とかしてくれ」。

   これを言い出したのは地方の学生ではなく、その企業所在地在住の学生。他社の選考・説明会参加やアルバイトなど他の予定が重なっている、でも、御社にどうしても入りたい、だからどうにかしてくれ。

   これがこの学生の言い分です。

   入社意欲が強いなら他の予定をどうにかしろよ、という話です。

   しかも、選考日程が数回しかないならまだしも20回もあって、どれも無理とは。

「だったらご縁がなかったことで」

と言いそうな企業もあるはずですが、この企業はなんと結局、1次選考を免除しました。

ごね得は実は落ちるだけ?

   では、この学生は、ごねて得をしたのでしょうか?

   実はまったくそんなことはありません。

   1次選考は免除されましたが、2次選考での不合格がほぼ確実だからです。その理由をこの企業の採用担当者に聞きました。

「どうしても入社したい、というなら、ごねる相手はうちではなく、他の予定のはず。それができないのなら、仮に内定を出して入社しても、本当にごねるだけのお荷物社員です。それをどうして通したか?簡単ですよ、風評被害対策です。2次では、どんなに優秀でも確実に落とします。本当に選考に参加するだけ。本人は1次免除になってラッキーと思ったままなら、うちのことを悪くは言わないでしょう?」

   うーん、知らぬは本人ばかりなり。

ESで手紙を10通書いて選考通過

   似たような話、大手食品メーカーを取材したときにも聞きました。

   ESを郵送する際、他のものを同封しないように指示しているにもかかわらず、企業研究レポートなどを勝手に同封する学生は後を絶ちません。

   これだって、ごね得狙いと言えますが、多くの企業は問答無用で落としていきます。大手食品メーカーも同じだったのですが、手紙を同封した学生だけは次の選考に残した、と話してくれました。

   手紙とは、採用サイトによく出ている先輩社員に対しての手紙です。

「うちでは10人出したのですが、10人それぞれへの手紙でした。そこまで思いが深いなら落とすのに忍びなかったのと、落とした場合、何を言われるか、その恐怖心もあったので次の2次選考には通しました」

   ただし、この学生、結局は2次選考で落ちたとのこと。先ほどの企業と違い、落とす気はなかったそうです。

「なんと言うか、ピントがずれていました。それからは手紙だろうが何だろうが、指示から外れたものを同封しても落とすようにしています」

落とすに忍びなくても結局同じ

「そこまで言うなら」

と、企業側が折れて学生の「ごね得」が成功しても、その後の選考で落ちていくのが、締め切り後のエントリーシート・履歴書受け付けです。

   本来は受付日までの必着(または受付日当日消印有効)がお約束です。それを過ぎたエントリーシート・履歴書は受理しない企業が大半です。

   来ても受け取り拒否で返送するか、受け取ってそのまま廃棄処分です。

   ただ、ごくまれに、直接持参で熱意をアピールする学生もいて、その場合、受け取る企業もあるようです。

   ただし、受け取るとした採用担当者も異口同音でそうした学生は落ちていく、と話してくれました。

「本当に入る気があるなら、締め切り前にエントリーシート・履歴書を作成して送っているはず。それができないのは優先順位の付け方を間違っています。書類を受け取って、面接に呼んだ学生もいますが、中盤の選考で落ちていき、最終選考・内定にまで至った学生はいません」

最終選考落ちもノート・資料持ち込みで逆転

   どうやら、選考序盤でのごね得は説明会参加以外、あまり意味がなさそうです。

   ではごね得狙い、全くのムダか、と言えばそんなことはありません。最終選考では、落ちてもごね得で逆転する話をよく聞きます。

「最終選考でうまく話せず、その後の人事フィードバッグ面談で、企業研究ノートを見せたところ、それがきっかけとなって逆転内定が出た」
「海外営業志望を取り下げれば内定を出すと言われたが海外営業にこだわって、一度は落ちた。でも、3週間後に『海外営業のポストを君のために空けた。もし、来てくれるなら内定を出す』と言われて内定」
「最終面接後に、人事の人が声を掛けてくれたので『実は』と広告案を見せた。すると、『これは預かって役員にも見せる』と言われて、内定につながった」

   この事情を採用担当者に聞いて回ったところ、選考の初期と終盤の違いとの答え。

「初期だと、企業が求めるレベルにない学生も多数います。一方、終盤だと、内定の出る学生と出ない学生の差はそれほど大きくありません。ですからダメでもごねれば逆転というケースもよくあります」

   ごねる際のご参考までに。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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