2024年 4月 24日 (水)

韓国「元キャリア女子」が語った 社内競争、長時間労働、同僚の自殺・・・

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   先日、ワーキングホリデーで来日している韓国人の尹(ユン)さん(仮名、30歳)と会いました。彼女は、韓国の有名大を卒業し、官公庁関連の企業で働いていました。ところが、20代後半を迎え、「自分のキャリアは、本当にこれでいいのだろうか」と考え、一念発起して退職、日本へやって来たのです。

   今回は、そんなユンさんの考える「韓国人女性のキャリア」について尋ねてみました。

かなりギスギスした雰囲気も

バリバリ働いていたが・・・
バリバリ働いていたが・・・

   大学で日本文化を学び、日本語が堪能なユンさん。退職前は、いわゆる「バリキャリ」で、男性と肩を並べて、毎晩遅くまで働いていたそうです。日本ではよく、「韓国の大企業は、入社倍率も高いが、入ってからも大変な競争社会。長時間労働も当たり前」という話を聞きますが、実際はどうだったのでしょうか。

   ユンさんいわく、「忙しすぎて鬱になる人が多かったですね」。朝から晩まで働き、「成果を残さねば」という焦燥感にかられる日々。男性の場合は、遅くとも40代までには、出世できるかどうかが決まるので、ユンさんのいた企業では、かなりギスギスした雰囲気もあったようです。そんな彼女がいた部署で、ある時、「自殺者」が出てしまいました。過労によるものか、仕事上の悩みによるものか、ユンさんは多くを語りませんでしたが、彼女は同僚の死に、大きなショックを受けたそうです。

   同席していた別の知人は、後に「ユンさんがショックを受けたのは、同僚が突然、自殺してしまったからというのもあるけれど、何より部署内で自殺者が出たにもかかわらず、職場が何のトラブルもなく『日常』に戻っていった点だと思う」と言っていました。利益向上への貢献が求められる中、悩んで苦しんで、自ら死を選んだ社員が出たにもかかわらず、会社は何も変わらなかった。同僚の不幸をきっかけとして、働き方に異を唱える社員もいなかったそうです。そんな会社のあり方に、ユンさんは疑問を持ったのでしょうか。辞表を出したのは、それから3か月後でした。

被災地でもボランティアに参加

   ユンさんは、会社をやめました。「キャリアが途切れてしまうのでは」という不安は、なかったといいます。とにかく、閉塞的な職場から抜け出し、自由を感じたかったのかもしれません。日本に来てからは、東日本大震災の被災地でのボランティアにも参加しました。避暑地のペンションで、住み込みで働いたこともあります。様々な人とのふれあいを通し、疲弊していた彼女の心は、徐々に癒やされていきました。

   日本と韓国とは、雇用における「女性差別」や、若者の就職難など、多くの共通点があります。内閣府の「男女共同参画白書(2014年版)」をみると、OECD諸国の「女性の就業率(25?54歳、2013年)」は、日本が34か国中、25位だったのに対し、韓国は29位。就業率の低さは、両国の女性にとって、企業社会が求めるものがあまりに多く、結婚や出産などのライフイベントとの両立が難しいことの現れです。日韓ともに、労働市場における女性の地位は、それほど高くありません。

   ただ、元「バリキャリ」のユンさんいわく、「女性だから、差別されていたという感じはなかった。大学も出たし、就職もできたから。でも、会社での競争がいちばん辛かったですね。同僚のこともあって、このまま、ハードワークを続けることに疑問を感じたのは大きかったです」(ユンさん)

   いつもニコニコしていて、冗談で周りを笑わせてくれるユンさん。そんな彼女が、かつては職場で深い苦しみの中にあったなんて、想像もできませんでした。ユンさんは、「韓国に戻ったら、収入は減ってもいいから、もう少し自由な職に就きたいです。お金より、大事にしたいものが分かったからね」と、笑顔で語ってくれました。(北条かや)

北条かや(ほうじょう・かや)

1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。著書に『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』。ウェブ媒体等にコラム、ニュース記事を多数、執筆。TOKYO MX「モーニングCROSS」、NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」(2015年1月放送)などへ出演。
【Twitter】@kaya_hojo
【ブログ】コスプレで女やってますけど
【Facebookページ】北条かや
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