「就活に有利なバイトがある」は都市伝説か

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   今回のテーマはアルバイトです。

   就活ではよく、

「アルバイト経験など役立たない」

と話す、採用担当者やカウンセラーがいます。

   一方で、この逆、

「アルバイト経験を話して内定が取れる」

と話す、カウンセラーもいます。

   学生にとって身近なアルバイトは、サークル活動と並び、話しやすいテーマです。

   では、実際のところ、どの程度、有効なのでしょうか?

学生と採用担当者では真逆の評価

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   まずは、リクルートキャリアの就職みらい研究所「就職白書2015 採用活動・就職活動編」のデータから。

「企業が採用基準で重視する項目と学生が面接等でアピールする項目」という項目があります。」

   企業側と学生側、同じ項目であるところがミソ。

   さて、トップは企業、学生、ともに「人柄」です。

   「アルバイト経験」は学生側だと2位ですが、これが企業側となると、8位。学生側の高評価に対して、企業側はそこまで重視していないことをよく表しています。

   実際に、採用担当者に話を聞くと、学生のアルバイト談は、うんざり、とする方が多数です。

「面接を実施すると、めぼしい飲食チェーンが全部揃う」
「マクドナルド、吉野家など同じチェーンのアルバイト談をアピールする学生が3人続くとさすがにうんざりする。面接担当の間では、『トリプルコーン』『スリーカードが揃った』など自嘲気味に話すことも」

アルバイトネタで内定を取る学生は何が違う?

   一方、アルバイト経験をアピールして内定を得る学生は今も昔もいくらでもいます。

   ここで多くの学生は、勝手に、あるいは、マニュアル本の影響で、

「リーダーシップ経験をアピールすればいい」
「役職に就いたことを話せば内定が近づく」

などと勘違いします。

   かくて、どの企業でも、面接会場には、サブリーダー、ホール主任、副店長などがあふれることになります。

   もちろん、企業側はそうしたアピールにはうんざりしています。

   一方、内定までつながるのは、役職ではなく、経験や発想などを自分の言葉で話せたかどうか、とする採用担当者が多数を占めます。

「たとえば、同じファーストフードでも、役職に就いたかどうかよりも、クレーム客にどう対応したのか、トラブルが起きたときにどう動いたのか。そちらの方が気になりますし、そうした話をしてくれる学生は、最後の選考まで残りやすいです」
「どのアルバイトでもいいけど、上の世代の客や店長・社員などとどう接したのか、そういう話をしてくれる学生は気になる」

などなど。

「就活に有利なアルバイト」経験者は語る

   アルバイトには、スターバックスやディズニーランドなど、就活に有利となる職種がある、とよく言われています。では、実際にどうか、と取材を進めると、学生によって大きな差がありました。

   内定までたどり着く学生は、そもそも、アルバイトネタに頼っていません。他のアピールポイントも多く、総合評価で内定につながるようです。

   それから、アルバイトネタに限っても、先ほども書いた通り、アルバイトの役職などではなく、経験談や発想を中心に話している、と取材に応じてくれた学生が異口同音に話してくれました。

   一方、アルバイトネタにこだわる学生は例年、苦戦しています。

   15卒で当初は就活で大苦戦した学生の談。

「就活に有利とされるアルバイトをして、その話をしたのですが、序盤は連戦連敗。1次か2次の面接から先は進めませんでした。就活で有利とされるアルバイトなのに、どうして、と思っていると、あるメーカーの面接終了後、フィードバック面談で、言われました。『君は自身のアルバイト経験に自信があるようだけど、同じアルバイトをしている学生も、君と同じ役職の学生もいくらでもいる。つまり、君がアピールしようとしているアルバイトの職種や役職は何ら僕らには届かない。でも、同じアルバイトの話をするにしても、自身の経験談を話してくれる学生もいる。実際にあった経験談は、やはり同じ体験をした学生がいるかもしれないけど、考え方、モノの見方などは人それぞれ。それが僕らにも届く。その辺が君と違うと思うよ』。これで職種や役職の話などはするのをやめました。すると、序盤の苦戦がウソのようにうまくいきました。もっと早く気づいていれば良かったです」

アルバイトへの就職支援を始める企業も登場

   アルバイトへの就職支援を始める企業も出てきました。

   そのうちの1社がエー・ピーカンパニーです。宮崎地鶏を出す居酒屋「塚田農場」が主力。

   店員がアルバイトを含め、接客に熱心(悪く言えばベタベタ?)でそれがリピーターを生んでいる居酒屋チェーンでもあります。

   さて、このエー・ピーカンパニーは、2012年からアルバイト学生への就職支援を実施しています。

   就職支援とは、具体的には、就職支援セミナーの開催です。

   2014年は8月から2015年3月まで毎月1回、東京本社で開催。内容は自己分析などの座学と、模擬グループディスカッションなどを含めたグループワークです。

   セミナーと言っても、もちろん、参加する学生は無料です。

   元は、大久保伸隆・副社長が店長時代に学生に対して、就活の話をする機会を小規模ながら設けていて、それが前身です。

「当時から、弊社のアルバイト学生を欲しいと、企業さんから言われていましたし、学生に対しても就職支援を、と考えていました。そこで、2012年からアルバイト学生全員を対象として実施。さらに2014年から、ツカラボと名称を変え、分かりやすくしました。講師は私含め、社内の者で3人ですが、私が中心です」(大久保副社長)

   大阪・名古屋でも、まとめたセミナーは年1回開催しますが、基本は東京開催とのこと。

   参加学生は毎回100人前後で延べ350人が参加。東京開催分については、北海道や名古屋からも参加する学生がいたそうです。

アルバイト定着にも一定の効果

   私が取材にお伺いしたのは、4月(2015年)中旬の「ツカラボ合同説明会」開催時。そう、名称通り、ツカラボ参加学生を対象に、合同企業説明会まで実施。約15社が参加していました。

   この説明会の合間に、大久保副社長に相談する学生、内定報告をする学生が多数いました。

   それまで講師として接しているから、というのもあるのでしょうけど、考えてみれば、エー・ピーカンパニーは従業員数が正社員だけで633人(2015年3月末現在)いる、一定規模のある企業です。

   その企業の、副社長と話す機会は一般企業であれば、そうそうありません。そこで得られるものは、単なる就活セミナー以上のものでしょう。

「セミナーは、納得できる就活をしてもらうためのものであり、テクニック一辺倒ではありません。合同説明会は、とある有名企業も参加希望を出していましたが、今回の規模などからお断りしてしまいました。来年以降はもう少し、規模を大きくする予定です」(大久保副社長)

   ツカラボは、塚田農場のアルバイトだけでなく、就活を意識する学生全般が対象ですが、

「ツカラボに参加している学生とそうでない学生のアルバイト定着率の差は1.87倍」(大久保副社長)

と、アルバイト定着にも一定の効果はあるようです。

   同様の取り組みは、規模の違いはありますが、同業他社にも広がりつつあります。

   今後は、飲食・流通問わず、アルバイトの福利厚生の一環で就職支援セミナーが当たり前になる、かもしれません。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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