部屋に来たのは18歳「派遣の仲居さん」 その時、旅行中の女子大生が「しんみり」した理由
時給は「1000円」
恵さんは、F子の質問攻撃にも、にこやかに答えます。「最初は私も、『温泉、いろいろ入りたいな』って思ってたんですけど、仕事で疲れるので、全然入る時間がないです」「この辺は、コンビニはありますけど、遊ぶところもないし、仕事して寝るだけなんですよ。でも、地元にいるより、楽しいですよ。毎日あっという間に過ぎていく感じです」
そうかぁ~・・・と、私たち一同は、なんだかしんみりしてしまいました。旅館の仕事は、客室の整理に、布団敷き・布団上げ、料理の提供や片付けなど、重労働です。朝早くから体力仕事をこなせば、疲れてバタンキュー、になるのも当然でしょう。恵さんは、休日は「ほとんど外出しない」と言っていました。派遣社員同士で仲良くなることは、(恵さんの場合)ないそうです。
往々にして、旅館のようなサービス業の賃金は、低く抑えられがちです。それが「ハケン」となると、時給はどのくらいだろう、などと下世話なことを考えていたら、恵さんが(サービス精神からか)教えてくれました。「1000円とかですけど、地元よりは、全然いいですよ」
学生旅行ではしゃぐ私たちのお世話を、地方出身で年若い「派遣社員」の仲居さんがしてくれる。なんだか、ちょっと申し訳ない気持ちになりました。
大手の旅館では、昨今、寮や保育施設を完備するなどして、福利厚生を充実させているところもあります。が、今や「おもてなし」も『ハケン』の時代かぁ・・・と、複雑な気持ちで、旅館を後にしました。恵さんは今、何をしているでしょうか。時々、思い出します。(北条かや)