この「問い」なくして独学の成功なし 「自分とはどういう人間なのか」

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『東大教授が教える独学勉強法』(柳川範之著、草思社、税別1300円)

   書店のビジネス書コーナーに必ずあるのが「読書法」「記憶法」「文章術」など、「法」と「術」で埋め尽くされた本棚だ。まるで忍法の「虎の巻」のように、これさえ読めば絶対に勉強法がわかるというような題名が並べられている。

   昼間は仕事、夜は付き合い、休日は家族サービスと、勉強する暇などないというサラリーマン諸兄の中にも、これならやれるかもと、思わず1冊を手に取り、やがて「読む時間を勉強に向ければよかった」とぼやいた経験がある向きも多いのではないか。

至ってシンプルな原則

   「独学勉強法」というこの本、昨(2014)年夏に初刷りが出て、手にしたものは既に第9刷で、帯には「大反響!!」の文字もある。

   著者は、高校にまったく行かずに、大検から通信制の大学教育に進み、東京大学の経済学部教授になった人物。といっても、引きこもりとか不登校というわけではない。父親の転勤で海外生活が長かったため、現地校には行かず、教科書などを買い込んで独りで勉強をし続けただけという体験から導き出された勉強法を綴っている。

   猛烈な、あるいは効率的な勉強法や記憶法が披露されているのかと、期待が膨らむのだが、書かれていることは至ってシンプルな原則ばかりだ。中身を紹介することは書評の域を超えるが、「こんな簡単なことでいいのか」と、最初は安心してしまった。

   入社してから昇進のたびに試験を課す企業は少なくない。英語の社内公用語化が進み、TOEICの受験を義務化する企業や、転職や独立のため仕事のかたわら資格の取得を目指す人も少なくない。インターネットで情報はいつでも手に入るが、自分で物事を解決するためには、やはり自分の頭で学んで身に着いた力しか頼りにならない。

   インターネットが、人の学びを「教育」から「学習」にシフトさせつつある。この本は、それも踏まえ、「なぜ、その勉強をするのか」「自分とはどういう人間なのか」という問いを投げかけ、「独学」で何かを身に着けるためには、その問いが避けて通れない道であることが示される。

   「こんな簡単なことで」と思った地味な手法も、その問いをくぐったうえでの結論だ。「あきらめていたあの勉強を始めてみるか」という気にさせる本である。(PN)

『東大教授が教える独学勉強法』
『東大教授が教える独学勉強法』
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