「日経のFT買収」背後に吹き荒れる嵐 ピケティ妻が示した旧メディアの限界

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『なぜネット社会ほど権力の暴走を招くのか』(ジュリア・カジェ著、徳間書店、税別1600円)

   

   日本経済新聞が英経済紙フィナンシャルタイムズを約1600億円で買収するというニュースは、日本はもとより、世界のメディア関係者に様々な憶測を抱かせた。「焦った日経の高値つかみ」「ジャーナリズムの風土が違いすぎる」など、同業者らしいやっかみも多いが、やはりネット時代の新聞の将来を考えたとき、勝ち組に位置づけられる両経済紙の合体は重大な意味を持つ。今回の買収前に書かれた本だが、新聞経営の背景と今後を読み解く視点を十分に与えてくれる。

   題名は権力批判のようだが、フランス語の原題は『メディアを救え』。欧米の新聞やテレビ、雑誌などの旧メディアが、ネット社会の進行の中で経営が苦境に陥るなか、民主主義を支える装置としての新聞社などは今のままの組織でいいのか、という問題意識が貫かれている。

政治や資本から独立したメディアの存続を

   著者は31歳の経済学者でパリ政治学院の准教授。ただ、『21世紀の資本』を書いたトマ・ピケティの妻であるといった方が、いまは通りがいいかもしれない。

   冒頭から現代のメディア状況を、ジョージ・オーエルが『1984年』で描いた社会になぞらえ、ネット社会がもたらした情報の無料化が新聞を中心とする旧メディア「産業」を弱体させていること、ひいては民主主義に必要不可欠な質の高い情報が伝わりにくくなっているという指摘は、旧メディアにとっては、自分たちの存在意義を強調してくれるありがたい指摘だろう。

   しかし、著者はそうした旧メディアに対し、広告も含めた収益に依存する企業として、さらに言えば株式会社として存続することは限界にきたと、引導を渡すのだ。

   既に欧米では財団によって運営される新聞や、寄付によって調査報道を行う非営利法人(NPO)などが存在するが、著者はそれらの得失も検討したうえで、「メディア会社」という新しいモデルを具体的に示し、政治や資本から独立したメディアの存続を図るべきだと提案する。

   「情報メディアは市場原理という唯一の原則を超えなければならない」という著者の言葉をどう受け止めるか。日経、FTならずとも、旧メディアが根源的に突きつけられている経営課題であることは間違いない。(MD)

『なぜネット社会ほど権力の暴走を招くのか』
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