「純情」な男子は就活に不利!? 「女子の方が優秀」説を分析する

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   今日のテーマは「男子学生」です。就職戦線では、なぜか評価が低い男子学生。

「採用段階ではどうしても、女子学生の優秀さが目立ってしまう」

とは、取材していてよく聞く話。

   女性を小ばかにするとき、

「だから女は~」

なんて言いますが、こと、就活ではその逆。

「だから、男子は~」

と言われています。しかも、言われていることに気付かないのも男子学生の特徴。気付け。

女子が男子を逆転、最近では10ポイント以上の差

やっぱり差があるな・・・
やっぱり差があるな・・・

   今(2015)年8月に発表された学校基本調査によると、全体(学部)での就職率は72.6%。しかし、男女別では、男子67.8%、女子78.5%。10ポイント差となるのは、2010年以降6年連続、女子が男子を上回るのは2000年以降、16年連続です。それ以前はバブル期(1990年、1991年)を除けば男子学生が上。1981年以前は、男子が女子を10ポイント以上引き離しているのが当たり前でした(最大は1959年の25.1ポイント差。全体79.0%、男子82.3%、女子57.1%)。

   それが2000年以降に逆転し、ここ6年は女子が10ポイント以上上回っている、これは一体どういうことでしょうか?

   諸説ありますので、1つ1つ見ていきましょう。

総合職と一般職

理由1:女子学生は一般職・準総合職を含んでいるから上回っていて当たり前

   よく言われる説であり、採用担当者やキャリアカウンセラーの一部が支持しています。

   技術職、研究職を除けば男子学生はほぼ全員が総合職。それに対して、女子学生は一般職や総合職との中間となる準総合職(企業によって地域限定総合職など)、それに総合職とバラバラです。

   もっともらしい説ですが、私は疑問です。

   まず、一般職、準総合職の採用者数が現在はそれほど多いでしょうか。

   はっきりした統計はありませんが、バブル期に比べて一般職採用が大幅に落ち込んでいます。

   女子学生の就職率を引き上げているのは、どう考えても総合職採用が拡大しているからです。

   一般職・準総合職採用の存在が6年連続で男女比10ポイント差を生む要因になっているとは言えません。

   もし、そうだとしたら、総合職採用が増えた2000年代半ばごろから10ポイント差以上ついていないとおかしいはずです。

安倍政権のウーマノミクスとの関係

理由2:ウーマノミクスで女子学生の採用自体が拡大している

   これもよく言われる説。

   確かに、これまで女子の総合職採用をしていなかった企業が急に始めるなど、ウーマノミクスの影響はあります。

   しかし、ウーマノミクスを提唱する第2次安倍内閣が成立したのは2012年12月。「男女比10ポイント差」は2010年からです。

   2009年(後半)当時は鳩山由紀夫内閣で、男女共同参画担当大臣は福島瑞穂・社会民主党党首でした。

   というわけで、ウーマノミクスもまた、主たる要因とは言えません。

理由3:女子学生の成長が男子学生よりも早くて優秀

   行き着くところがこれ。

   採用担当者を取材すると、ほぼ間違いなく出てくる話です。

   ただ、大学入試において、男子より女子が優秀、とのデータは特にありません。

   女子の方が成長は早い、という話も昔から言われています。その割に、就職率で男女差が逆転したのは2000年以降。

   1999年以前の女子学生の成長が遅かった、とするデータはどこにもありません。

   そもそも、就活の選考において、女子学生の方が優秀、との言説自体、昔からあります。

   どれくらい昔か、と言えば1950年代から。『婦人公論』1957年12月号の同種の記事「女子大学生に閉ざされた扉」に、この言説が登場しています。「女子学生優秀説」を掲載した文献としては、おそらくこれが一番古いものでしょう。

   ま、当時は、「選考では女子が優秀でも採用は男子」となっていました。実際、『婦人公論』の記事でも、

「男女同権、同一賃金、同一労働だからと高給を要求しながら仕事となると高校卒並み」

と、女子学生を酷評しています。

   これが、ようやく、2000年代に「選考も採用も女子が優秀」となるわけです。

   しかし、この言説だけではちょっと説明はつかないかな、と。

初動の早さ

理由4:早期に動く学生は女子が多くて優秀に見える

   採用担当者だけでなく、キャリアセンター職員を取材すると、早期に動く学生が多い、との話は結構出てきます。

   これは採用担当者で、インターンシップも担当している人からも出る話。

   3年生の夏から秋にかけてのインターンシップは、1日インターンシップでも、女子学生が多数。

   男子学生を欲しがる企業からすれば、

「女子学生に来るな、とも言えないし、でも、男子学生をもっと増やさないとまずいし」

と、モヤモヤさせるとか。

   それくらい、意識の高い学生は男子よりも女子が多いです。

   この早期に動く女子学生が結果的に、就活の序盤戦では飛び抜けて見える、そして、そのまま内定に至る、という説。

   競馬で言うところの先行逃げ切りですね。

   もっともな言説です。これも、はっきりしたデータがあるわけではありません。ただ、1日インターンシップの参加などを見ていくと、女子が多く、そうかな、とも思わせるに十分。

理由5:格好を付けたがるバカが男子学生に多い

「男は純情、女は薄情」

と言うわけではありません。

   男だって薄情な人はいくらでもいますし。

   ここで言う、純情・薄情とはこういう事です。

   たとえば、中学校で、マラソン大会があったとしましょう。

「私、走るの遅いの。だから一緒に走ろうね」

と言っていた女子が、いざ始まると、すぐ裏切って、さっさか走る、こういう光景、よくありませんでしたか?

   あるいは、定期テストの直前に、

「私、この科目、苦手。一緒に悪い点、取ろうね」

と言っていた女子が、いざテストになると、ちゃんといい点を取る、こういう光景、よくありませんでした?

   これが「薄情」という意味です。

   で、本当にゆっくり走ったり、悪い点を取ったりするのが「純情」。

   この「一緒に」との言い方、どう考えても、悪かったらどうしよう、という予防線を張っているだけです。裏切ることも、言っている側に悪気はありません。

   が、本気で信じ込んだ側からすれば、裏切者、となるわけで。

友人を大事にするのは良いが・・・

   これが就活だとどうでしょうか。

   どの大学でも、3年生の5月から7月ごろ、就活を意識させるためのガイダンスを開催します。

   このガイダンスで就活の現状やシステムなどを説明していきます。キャリアセンター職員が話すこともあれば、就職情報会社やキャリアカウンセラーなどを学外から呼ぶことも。この私も、ときどき、お呼びいただくことがあります。

   その際、観察していくと、どうも男子学生の方がのろのろしています。

   時には、職員の振りをして、入場誘導などもするのですが、

「就活で意識高いなんて言われたくないからさあ、前の方、座るの、やめようぜ」
「そうしよう」

と言い合っているのは大体が男子学生。

   ま、百歩譲って、最初から前に座りたがらないのは男女差、無関係だったとしましょう。

   入口が狭くて、後ろの方から席が埋まっていくと、職員と職員の振りをした私は、

「はい、立ち止まらないでどんどん前に進んでね~。前の方から座っていって~」

と、声を掛けます。

   ここまで指示をしても、無視をしやがるのが男子学生。

   就職ガイダンスだけならまだしも、仲間内で、

「就活でガツガツしているの、バカらしいよね」

などと出ようものなら、それを頑なに守りたがるのも男子学生。

   もう~。

   友人を大事にするのはいいですが、それと就活は別。

「就活をあえてやらない自分が格好いい」?

   そんな訳ない、出遅れていくだけです。

   この、友人、仲間を大事にする、との誤解が男子学生に多く、それが「男女比10ポイント差」につながっているのではないでしょうか。

   私はこの男子学生純情説が有力、と考えています。

「就活純情派」否定宣言

   この点、女子学生は実利的です。

   就職ガイダンスで「就活?まだ早いよね」と言い合っても、それはそこだけの話。

   言ったそばから、別日程の就職ガイダンスを予約したり、1日インターンシップに申し込んだりします。

   この行動の違いが、「男女比10ポイント差」につながっているのではないでしょうか。

   特に2015年卒の女子学生就職率は78.5%。これは過去最高の1991年・81.8%(全体では81.3%)に迫る4番目に高い数値です。

   ここまで差が出ることに男子学生はもっと意識した方がいいのではないでしょうか。

   というわけで、ここに就活において純情派は損する、すなわち、就活純情派否定宣言を発するものであります(石渡嶺司)。

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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