パワハラ上司にみんな困っています 会社が解雇することはできますか?

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   最近、シャープが大規模な希望退職を募集した事が話題になりました。希望退職者が一定数集まり、目標数には届かなかったものの追加募集は行わないそうですが、会社と労働者が双方合意の上で退職することはなかなか難しいですね。業績悪化に伴うリストラだけでなく、辞めさせたい会社側と、辞めたくない労働者側で対立が起こることは、よくある話です。

   今回は、周りの社員に迷惑をかけてしまう社員を、会社は退職させられるのかどうかについて説明していきます。(文責:「フクロウを飼う弁護士」岩沙好幸)

横柄な態度、暴言、書類を投げ返す・・・

それ、パワハラです!
それ、パワハラです!

   私は会社で事務員をしています。隣の席の上司が事あるごとに声を荒げて怒ってくるので、困っています。この上司は最近、家庭内で問題があったらしく、ストレスのせいか少々暴力的になっており、私が仕事の事で声をかけると、「うるさい!」と机を叩いて威嚇してきます。

   その他にも、書類の確認を頼むと投げ返してきて、床に落とした書類を拾わされます。どう考えても怒られるようなことではなく、とても小さな事でガミガミ言われるので、こちらも腑に落ちません。

   また、目を付けられているのは私だけかと思いきや、向かいの席の社員は足をのばしていたら足を蹴られたり、書類がはみ出していただけで、はみ出ていた書類を目の前で破かれたりするなど様々なエピソードがあります。さらには自身の上司に対しても、あからさまに不機嫌な態度も取るようになったあげく、最近では、外注先の方にも暴言や横柄な態度を取っているようで、どうにかしてほしいと連絡がありました。

   このままだと、会社にとって大きな損害が出てしまうのではないかと不安に思い、部長に相談したところ、「ここまで被害が出ているのであれば、クビにするしかないかな・・・」と言っていたのですが、こういった状況でクビにすることはできるのでしょうか?また、もしクビにできないのであれば、退職を促すような動きをすることは法的に問題ないでしょうか?(実際の事例を一部変更しています)

弁護士解説 解雇には、客観的な合理的理由などが必要

   ひどい上司ですね・・・周囲の社員の方々の心労も大変なことでしょう。

   さて、使用者は無制限に労働者を解雇できるわけではありません。解雇は、労働契約法16条で客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には無効とされます。

   では、どのような場合が、客観的に合理的な理由があると言えるでしょうか。

   幾つかの類型がありますが、病気や怪我などで労働能力が相当程度低下した場合や、勤務成績の著しい不良などがこれにあたります。また、労働者が会社の規律や職務命令などに違反した場合があります。さらには、整理解雇といって会社の経営上の必要に基づくものなどがあります。

   いずれの解雇事由もさまざまな要素から判断し、全体として会社の一方的な都合による解雇といえれば不当解雇となってしまいます。

   また、退職勧奨とは、使用者が労働者に対して会社を自主的に辞めるような働きかけをすることをいいます。俗に「肩叩き」と言われている行為ですね。退職勧奨に応じるかどうかはあくまで労働者の自由なので、会社が退職勧奨をすることは基本的に自由にできます。

   もっとも、会社が辞めさせたいと思っている労働者に対し、本人が辞めるまでしつこく退職勧奨することには問題があります。退職勧奨が自由にできるというのは、あくまで労働者に断わる自由があることが前提になっているからです。相手が明確に拒否しているのに何度も退職を促すと、それは退職勧奨とはいえず退職強要といえます。

   労働者の退職の自由を奪うような退職強要は不法行為なので、損害賠償の対象になってしまいます。注意してください。

退職勧奨と退職強要の差に注意

   さて、今回のケースについて検討してみましょう。

   この上司は、部下に対して暴言を吐いたり、嫌がらせをしたりと典型的なパワハラ上司と言えそうですね。自分の上司にも不適切な態度で接したり、外注先の人にも暴言を吐いたりと横柄な態度を取っています。会社に損害を与えかねない人物といえますから、会社がこの上司に辞めてもらいたいと考えたとしても不思議ではないですね。

   もっとも、この程度の上司の素行の悪さで解雇できるかというと大いに疑問があります。

   上司の勤務態度は退職させるほど著しく悪いとは言えないですし、まだこの上司に指導や勧告がされていないからです。この上司に注意して改善の余地がある以上、現段階での解雇は無効となってしまうでしょう。

   そうなると、退職勧奨をすることが考えられますね。クセのある方のようなのですぐに退職してくれるとは限りません。先ほど言いましたように退職の強要にならないように十分に注意してくださいね。


ポイント2点

●解雇は、労働契約法16条で客観的に合理的な理由(労働能力低下や勤務成績の不良、職務命令違反など)を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には無効。

●会社が退職勧奨をすることは基本的に自由にでき、退職勧奨に応じるかどうかはあくまで労働者の自由。何度も退職を促すと、それは退職勧奨とはいえず退職強要になる。

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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