コメ離れを解消する(?)炊飯器 「本当のイノベーション」を考える

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   先月は、東京の実家に短期滞在した。

   冷蔵庫をあけると、おかずは残り物があったし、大好きな納豆もあったので、ご飯でも食べようとおもった。しかし、肝心の白米がない。

   しょうがないので、コメを研いで、炊飯器にセットして、炊飯ボタンをおした。

   しかし、待てども待てども炊き上がらない。

   表示をみると、残り50分とあるではないか。

   まじかこれ。じっくり蒸らしの、釜炊きモードみたいなのを選択してしまったので、炊きあがるまでに1時間はかかるらしい。

時間がかかり過ぎて面倒臭い

もっと気軽に味わうには・・・
もっと気軽に味わうには・・・

   そんなに待ってられるかとおもい、急速炊飯にモードを変更しようとしたが、これができない。

   キャンセルができないのだ。炊き方が違うから途中でキャンセル出来ないのだろう。

   取り消しボタンを押しても、キャンセルされないし、蓋を開けようとおもってもロックされてしまっている。 一度炊き始めたら、蓋さえあけられない親切な仕様なのだ。

   むりくり開けようとしたら、すきまから蒸気がでてきて手を直撃。あやうくやけどをするところだった。

   どうもこの炊飯器、急速炊飯にしたところで、なんと35分もかかるらしい。

   急速というと10分とかのイメージだが、35分もかかる。

   これでは、まったく現代人のライフスタイルにマッチしていない。

   オンデマンドでいろいろ食べたい人にとって、35分とか、ましてや1時間もコメだけのために待つとなると、コメを食べる気力が失われてしまうようだ。これに研いだり、水につける時間もくわえると、

   1時間半くらいまえから計画しないとコメが出来上がらないのではないか。

   若者のコメ離れというのを聞くことがあるが、こんなに面倒臭かったら、コメを炊くより、パスタやうどんといった、鍋一つで10分で調理できるほうになびくのも致し方ない。

やたらな多機能さは、笑いの種に

   日本の炊飯器といえば、多機能で有名だ。しゃっきり、ふつう、もちもち、釜炊き、蒸らし、とにかくいろんなモードとボタンがついている。そういう方向で機能の充実を図っているのだろうが、ほんとうに必要なのは、5分なり10分でコメがたける機能ではないかとおもう。

   日本の家電のむやみやたらな多機能さは、笑いの種になっているのはご存知のとおりだ。日本のTVのリモコンのボタンの多さは世界一。同じく、炊飯器も、そういう方向性しか見えていないように思える。

   筆者が住んでいるベトナムの炊飯器は、ボタンは一つしかない。ボタンを押すと、だいたい10-15分後に炊けている。超急速だ。

   これを凌ぐような、5分で炊けるような炊飯器を開発したら、それこそイノベーションだと思う。

   家電メーカーは、超釜ふっくら何とか炊きとか、細かすぎて、ユーザーはさっぱりわからないようなところで差別化するのではなく、直球で現代人のニーズに答えてほしい。多機能がイノベーションなのではなく、ライフスタイルのニーズに合致した製品こそ、むしろ本当のイノベーションだろう。(大石哲之)

大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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