「会社のためにデータ偽装」のウソ 「大義」のウラに潜む人間心理

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   業界大手のグローバル企業による粉飾決算や性能偽装問題、マイナンバー制度を巡る贈収賄事件、マンションの基礎工事に関わるデータ偽装の疑い、「三たび」製品の性能偽装を公表したメーカー等々、企業不正を犯すフツーの人々の残念なニュースが相次いでいる。

   どうしたら企業不正を根絶できるのか?誰もがこの答えを知りたいだろうが、残念ながら「根絶は不可能」というのが現実だ。その現実から目をそらさずに、不正を着実に減らすための取組みを強化しなければならない。そのためには「人はなぜ不正をしてしまうのか」という古くて新しい問いに答え続けていく必要がある。

所詮は「私利私欲を満たすための行為」か

バレないよ、な・・・
バレないよ、な・・・

   そこで問題。次の「1」から「3」の中で、社員が粉飾などのデータ偽装を犯してしまう理由として「一般的とはいえない」のはどれか。

1:自分の地位を維持・向上させたいと思うから
2:発覚しない、隠し通せるだろうと思うから
3:会社のためにそうするしかないと思うから

   答えは――「3」である。横領の動機が私利私欲のためであるのに対して、粉飾は会社のためを思って行う場合が多いという考えもあるが、実は「会社のため」という言い回しは、偽装行為を正当化し、自分の良心と折り合いをつけるための方便に過ぎない。粉飾決算やデータ偽装によって非常に厳しい制裁を受ける企業の姿をこれだけ目の当たりにしている中で、「偽装するのが会社のため」と本気で考える人はまれであろう。

   選択肢3を正しく言い換えるなら、「会社のためにそうするしかないと自分を欺き、現実から目を背けるから」となる。本心は、目標未達で叱責されたり、ボーナスが減ったり、出世競争に遅れをとったり、さらには今の地位を失ったりするのを避けたいという自己保身、つまり選択肢1の心理状態なのである。横領ほどあからさまな金銭欲ではないものの、データ偽装も所詮は私利私欲を満たすための行為であるというのは言い過ぎだろうか。

防止するためのポイント

   これを踏まえると、データ偽装を防止するためのポイントは次のようになる。

   まず、選択肢2のように思わせないこと、つまり、データ偽装を隠し通すのは不可能であり、必ず発覚するということを知らしめることが重要だ。日々作成される伝票や業務報告の点検から再徹底しなければならない。経理事務を一人に任せきりにしたり、チェックを形式的に済ませてしまったりするのは、粉飾を誘発させる罪深い行為だ。

   さらに、データ偽装をした者には懲戒免職を含む厳しい処罰が待っているということも知らしめることで、「自己保身のために粉飾をする(または、部下に粉飾をさせる)」という考えがいかに矛盾に満ちた愚かなものであるか、ということを痛感させる必要がある。

   最後に、どんな理由であれ、数字をごまかして体裁を整えることは「決して会社のためにはならない」ということを、経営者が本気で言い続けることである。その上で、業績不振や作業上のミス、品質問題などの悪いニュースほど早く、正直に報告することこそが「会社のため」であると強調し、実際に報告を受けた上司は逃げずにリーダーシップを発揮し、会社全体で問題を解決する方向に舵を切らなければならない。

   「問題を起こしたら承知しないぞ!」と言われると、人は問題を隠しやすくなり、データ偽装を誘発してしまう。上司は常日頃から「起きた問題を隠したら承知しないぞ!」という姿勢を明確にし、部下の仕事ぶりにきめ細かく目を向けることが大切だ。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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