会議でわかる社長の「裸の王様」度 こんな展開なら重症です

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   企業のマネジメントのお手伝い、すなわち組織活性化のお手伝いをさせていただく場合に、まずその会社の会議を見せていただくということは、私の常套手法のひとつです。

   会議は、組織のフォーマル・コミュニケーションです。すなわちその会議運営の流れを見ることはその組織のコミュニケーションのスタイルを知ることであり、その組織がどのような運営状況であるのか、あるいはどのような組織風土であるのかを会議運営から端的に知ることができるのです。

意見に合わないものは排除されるワンマン会議

もうすぐ会議だ・・・
もうすぐ会議だ・・・

   組織活性化上問題のある会議は、大抵以下の2種類です。

   ひとつは、至って形式的会議の組織。経営会議や部門の決定権を持った会議、つまりトップや担当役員が出席するフォーマルな会議が、たいてい作り込まれた資料と入念な根回しで予定調和的に淡々と進められていくケースです。私の古巣の銀行はじめ、保守的で古い体質の大企業にありがちな会議なのかもしれません。あるいは、二代目、三代目経営者でまだ自分のポジションを確立していない場合にも、この手の会議は存在します。

   これは、会議と言うよりもシナリオに沿った会議劇かとも思われる内容なのです。議案作成部門が「こうしたい」と提案しつつも、トップや関連部門への根回しにより意図的にネガティブな意見は事前に排除されている。結果、決定権を持った人間の了解を得るための報告中心の会議形態になっているとも言えます。会議の場で率直な意見を交わすことで生まれるはずの、新たな展開や斬新な発想は期待できないという欠点は明白なのです。

   もうひとつは、オーナー系企業にありがちな、決定にかかわる意見はすべてトップのみが発して、意見に合わないものはことごとく排除されていくというワンマン会議。会議とは名ばかりで、トップの指示をもらうだけの場となっていると言ってもいいでしょう。中堅、中小企業だけでなく、大企業でもトップの権力が強い組織には間々見られるケースです。

   問題は、決定権者のコミュニケーション姿勢

   このケースの問題点は明確です。次第に「何を言っても否定されてしまうなら、始めから何も言わないでおこう」という会議メンバーの暗黙の了解ができ、社長の誤った判断にも誰もストップをかけられない。社長の『裸の王様』化をどんどん進めてしまうことになるのです。個々の「粉飾指示」に誰も逆らうことができず、結果的に稀に見る巨額粉飾に至った東芝の業績会議などは、まさしくこの例であると言えます。

   「なぜこのような会議が生まれてしまうのか」なのですが、これはひとえにリーダーである経営者、決定権者のコミュニケーション姿勢にあるのです。

   アメリカの心理学者マーシャル・ロサダ氏は、「チームや会議がうまく機能するにはポジティブな時間とネガティブな時間の比率を、『3:1』~『11:1』の間に収める必要があるという調査結果が出た」というレポートを公表しています。これは「ロサダ・ゾーン」と呼ばれるものなのですが、つまり、1回のネガティブな発言に対して3回から11回のポジティブな発言をしないと、有効なチーム運営や会議運営はできないと説いているのです。

   先の2つの例で言うなら、形式的会議に流れ、トップがポジティブもネガティブも意見を言わないのでは、そもそも有効なコミュニケーションが成立せず論外。ワンマン体質で自己以外の意見を潰すネガティブな発言をくり返す会議もまたコミュニケーションとして意味がない、ということになるでしょう。つまり、会議はそれがそのまま組織の風土を反映するものであるが故に、このような会議コミュニケーションの組織には活性化は望むべくもないということになるのです。

「人はポジティブな人に惹かれる」

   ある時、私は知り合いのコンサルティング会社A社の案内で、中堅サービス業B社の会議を見学させてもらいました。「社長を中心とした社内コミュニケーション円滑化のケーススタディ」です。公開会議でしたので、議題は「社内旅行実施に関する賛否について」という至って軽いものでしたが、根回しなしの状態から、社長中心に賛成反対活発な意見交換となり1時間程度の会議見学からも円滑な社内コミュニケーションの実情が良く分かりました。

   二代目のB社社長は、社内コミュニケーションの悪さを悩み、A社にコンサルティングを依頼。A社は寡黙であった社長の会議での立ち位置をポジティブな発言を通じて変えていく指導をおこない、報告的会議から意見交換の場としての会議に移行させたのです。主要会議での社長の変化で意見交換が活発になり、年間売上は20%増えたのだと言います。

   最終判断を下すリーダーたる社長の発言は、出される意見に対して決して批判一辺倒にならず、率直に良い部分は良い、違うと思う点は違うと自身の見解を述べた上で、自身の考え方も明確に示す。そして、さらにそれに対して出された社員からの意見にも耳を傾けつつ、納得できるものはその出された意見へのリスペクトの念を表明して前向きに修正する。B社では、「ロサダ・ゾーン」に近い会議運営を現実に見せてもらった気がしました。

   「人はポジティブな人に惹かれる」とロサダ氏は言います。世の経営者たるもの、自社業績の先行きを心配すれば、ついつい小言のひとつも言いたくなるのが常でもあり、ポジティブな発言が足りている経営者はあまりいないのかもしれません。しかし、言いたい小言をグッと堪え、受け入れる気持ちを持ってポジティブな発言に切り替えるなら、組織はもっと元気になる。組織に元気のなさを感じたなら、まずは組織を映す鏡である会議から。「ロサダ・ゾーン」を参考に、社長自身の立ち位置を変えてみてはいかがでしょうか。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。 連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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